日本のSNSに平和をもたらせるか?mixi2開発チームに聞いてみた(前編)

mixi2の開発・運営のお二人に取材し、インタビュー記事にしました
境 治 2025.06.13
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みんなが待ってたSNS、mixi2の開発者に聞く

昨年12月にmixi2が登場した時、多くの人びとが快哉を叫んだだろう。16日のサービス開始から1週間で登録者は120万人に達した。SNSがスタート直後にこれほど登録者を集めた例も他にないはずだ。

殺到した理由ははっきりしている。みんな既存のSNSに嫌気がさしているのだ。特に米国発のサービスを使っていると、Xは荒れたタイムラインに投稿する気がなくなり、Facebookはお友達の投稿が減り広告や見知らぬ人の投稿が並ぶ。

私は2009年にTwitterを始めて、ブログを通して多くの人たちと出会い、繋がった人びととFacebookで情報共有するようになった。当時はそれぞれ穏やかな空間で、軽口を交わしたり興味ある記事を共有したりで毎日楽しかった。また私にとっては自分の記事を読んでもらう入口にもなった。時に炎上しかけたり因縁をつけられることはあっても大事には至らなかった。

あの頃に戻りたい。だれもがそう感じていた絶妙なタイミングでのmixi2の登場に、多くの人がほっとしただろう。

あれから半年が過ぎ、5月16日にはWEB版が出てスマホだけでなくPCでも使えるようになった。ただ、現状はまだFacebookとXも使いつつ併用している状況。私は記事を公開すると、Facebook、X、mixi2、さらにThreadsとBluskyにも投稿していて、別の意味でSNS疲れになりかけている。

米国のSNSはまた豹変しないとも限らないので、ぜひともmixi2に頑張ってもらって登録者数を増やし、「これ一本」で済むようになってもらいたい。

だが開発者側はどう考えてるのか?そこで、株式会社MIXIのオフィスを訪ね、mixi2のデザインを担当する藤崎宏司氏と、プロデュース担当の岩野成利氏にお話を聞いた。

長い記事になるが、お二人の言葉をすべて届けたいので前後編に分けてお届けする。

取材に応じた岩野成利氏(左)と藤崎宏司氏

取材に応じた岩野成利氏(左)と藤崎宏司氏

目指すのは「今を共有でき、すぐ集える」

――まず、mixi2の開発理念について教えてください。XやFacebookとどう差別化するお考えでしょうか?

藤崎氏:XやFacebookなど、いろんなSNSがそれぞれ特性を持っていますが、それらのいいところは学びつつ、mixi2ならではの独自の価値観を作り出すことを目指しています。

現状は、Xの中で無理やりアルゴリズムによって見たくない広告や情報も表示され、ユーザーさんの不満が顕在化しています。

そういった問題に対して、SNSの基本的な価値である「繋がり」に原点回帰して、昔のmixiで作ったブランド価値をもう一度今の時代にアップデートしていこうと考えています。チームで共有しているコンセプトは「今を共有でき、すぐ集える」というものです。より安全性が高く、安心して自分語りができるような空間にしていきたいと思っています。

藤崎氏はUX・UIデザインを担当している

藤崎氏はUX・UIデザインを担当している

――開発の具体的きっかけは何かありますか?

岩野氏: そもそものトリガーは、イーロン・マスク氏によるTwitter買収でした。元々社内で「そろそろSNSの文化圏がやばくないか」という話はずっとあって、外からも「MIXIさん頑張ってくれよ」との声が聞こえていました。

そういう状況の中、雑談レベルで「やろうか」と言っていたのが具体的に進み、賛同する人間が集まって「じゃあ、このメンツでチームを立ち上げよう」ということになりました。

岩野氏は企画・プロデュースを担っている

岩野氏は企画・プロデュースを担っている

――なるほど。現在のmixi2は非常に穏やかに進んでいますが、何らかのモデレーションを行っているからでしょうか?

岩野氏:現状では、モデレーションより「空気感」を大事にしています。Xを中心としたSNSの空気感は正直良くないと思っていて、我々はソーシャルネットワーク、つまり繋がりを大事にしたいと考えています。

安全性については、ユーザーにルールやガイドラインでお願いするだけでは限界があるので、ネットワークをうまく作ることで自然にそうなるよう持っていきたいと思っています。

具体的には、コミュニティ機能で小さなネットワークを作れるようにしています。規模が大きくなって数万人になると、知らない人が混じって空気が悪くなってしまうので、「この人達と絡みたい、繋がりたい」という形で、ある程度小さなコミュニティを作れるようにしています。

また、こちらからのレコメンドよりフォローを中心にした設計にしています。ユーザーが自身で選択した人の情報を手に入れられるようにして、そのフォロー行為をもとに我々もレコメンドするという形です。ユーザーから遠い関係の情報を我々が勝手に伝えることは基本的にありません。

招待制にもこだわっていて、知り合いが知り合いを呼んでくるスタイルなので、価値観が遠い人が突然絡んでくることがスタート地点からない状態にしています。

ユーザーの声を聞き、日々進化させていく

――マネタイズについてはどのようにお考えですか?

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