「配信」は映画を発見し劇場でさらに楽しむ入り口でもある

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中 ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
配信中の作品を映画館に見に行く深い愛情
映画館の新しい形の楽しまれ方について「調査情報デジタル」に書いた。Filmarksのリバイバル上映と『超かぐや姫』のヒットを紹介し、配信で知った映画を鑑賞しに劇場に行く潮流を追った内容だ。
長い記事になったので書ききれなかった補足的なことを書いておきたい。
『超かぐや姫』に気づいたのは公開直後の2月23日、連休最終日の朝だ。チネチッタの上映スケジュールを見たら夜8時台の回がすでにほぼ埋まっていてたいそう驚いた。朝から晩までびっしり。

画像:当日のチネチッタ予約ページ
そういえばNetflixで配信していたな、配信で最終話まで見たらこの劇場版が見たくなる仕掛けだろうなと思って調べたら、配信中のものと全く同じ映画が劇場で公開されていた。それを知ってさらにたまげた。
しかも「特別興行」で一律2200円、さっきのスクリーンは【LIVE ZOUND】という格別音響がいいのでプラス300円。つまり2500円もする。
後日見に行くと、平均年齢19歳くらいの男の子たちが席を埋めていた。アルバイト代を注ぎ込んでいるに違いない。その熱量にまた驚いた。
『超かぐや姫』現象は一見理解できない。だがこれを、Filmarksが始めたリバイバル上映と並べると、自分にも”わかる”話になる。
私はコーエン兄弟作品が好きで、中でも『ファーゴ』が大好きだ。96年の公開時に劇場で見たし、DVDが出たらすぐ買った。2010年代にドラマ版が始まると、そのためにスターチャンネルに入会した。
Filmarks 90'sで今年2月に上映されるとまた行かねば!と盛り上がった。DVDを持っているのにだ。結局時間が合わなかったのでU-NEXTで配信で見てしまった。
私にとっての『ファーゴ』が、少年たちにとっての『超かぐや姫』なのだ。何も変わらない。
Filmarksに取材に行き、渡辺順也氏からリバイバル上映用に制作した小型ポスターを見せてもらった際は、よだれが出そうになった。『ファーゴ』以外にも『パルプフィクション』『トレインスポッティング』『バッファロー66's』などそれぞれ何度も見ている。

裏を返せば新作にとって難しい時代
ただ、取材して知ったことだが、『超かぐや姫』は”狙って”成功したわけではない。いや”狙うのをやめた”ことで成功したと言うべきだろう。
ツインエンジンは元々フジテレビでノイタミナ(木曜深夜のアニメ枠、今は金曜深夜)のプロデューサーをしていた山本幸治氏が立ち上げた会社で、いくつかの制作スタジオを傘下に持つ。『超かぐや姫』はスタジオコロリドが制作したが、Netflix契約の作品がその前に2本あった。『雨を告げる漂流団地』『好きでも嫌いなあまのじゃく』で、この2作は配信と同時に劇場公開している。ただ残念ながら興収はかんばしいものではなかった。『超かぐや姫』には先行事例があったのだ。
そこで『超かぐや姫』では「配信に集中しましょう」となった。配信と劇場の両方でヒットさせたい意気込みをグッと堪えて配信でのヒットをとにかく目標にしたら劇場でもヒットした。前の2作の経験が今作につながったのだろう。
配信が劇場ヒットの入り口になったと言えるが、逆に言うと劇場でオリジナルアニメをヒットさせることがいかに難しいかの証でもある。だからこそツインエンジンも、スタジオコロリドと3作にわたる試行錯誤を重ねたのだろう。
「調査情報デジタル」にもコロナ禍を境にハリウッド映画とアニメ映画のポジションが入れ替わったと書いた。だが実際にヒットしているのは『鬼滅の刃』『チェンソーマン』をはじめ、原作とテレビアニメで人気を博した末の作品。いきなりオリジナル作品が当たるのはアニメ映画であっても厳しいのだ。むしろ厳しくなっているのかもしれない。
これはハリウッド作品も同じで、ひと頃のマーベル映画も大きなシリーズだったからヒットしたが、その後は逆に単発のヒットは難しくなった。タイトルを言って「ああ、あの作品ね」と公開時にイメージできないとヒットしない。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は久々の単発ハリウッド大作としてヒットしたが、それとて『ドラえもん』に勝てないのだ。
日本の映画市場は昨年、史上最高の2744億円を記録した。盛り上がってはいるが、同時にヒットが読めない市場になっている。だからこそ『超かぐや姫』のようなトライアルが求められているのだ。
配信は劇場ヒットの発射台になる?
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