1局2波の先に何が?ローカルメディアはドネーション中心にモデル構築をいま始めるべきではないか

ローカルメディアの今後について考えます
境 治 2026.09.29
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1局2波はテレビ局経営の救いか?

同じ地域で1つの放送局が2つの放送波を持つ、いわゆる「1局2波」が可能になる。今月中に総務省令が改正される見通しだ。ローカル局の再編を促す制度改正として報じられている。いままでできなかったことができるようになるのは、選択肢が増える意味でいいことだと思う。だが、多くの人が感じているように、これは今後のテレビ局経営の解決策ではない。厳しくなったら一緒になってもよくなった、ということであり、これで特にローカル局の未来が安定するわけではない。悪い言い方をすると一時凌ぎの選択肢のが増えただけ。そして厳しくなった他局をわざわざ「一緒になろう」と救うようなことをしたい局は出てくるのだろうか。

今回の制度改正をめぐるパブリックコメントには148件の意見が寄せられ、そのうち地上波ローカル局22社分をプログラマティカの楳田良輝氏が丹念に整理している。読むと、賛否のどちらかだけでなく、多様な意見が出ているのがわかる。

石川テレビは以前から1局2波を経営上の選択肢として提唱しており、今回の改正を歓迎している。人口100万人余りの県に民放4局という構造を、そのまま維持するのは難しいという判断だ。一方、青森放送は「2局を1社にしたところで、設備や人員のコストが単純に半分になるわけではない」と、効率化の効果そのものに疑問を呈している。名古屋テレビは原則として慎重で、認めるにしても必要性と緊急性の高い地域に限定すべきだという立場をとる。

そして、次の2つの指摘は重いと感じた。

高知放送は、3局地域でA局とB局が統合した場合、残されたC局が広告営業でも投資でも不利になる可能性を指摘している。統合する側の話ばかりが語られるが、統合しなかった局に何が起きるかまでを見なければ、制度の目的とは逆の結果を招きかねない。

鹿児島テレビは、チャンネルが2つ残ることと、番組の多様性が残ることは同じではないと言う。統合後に報道を一本化し、同じ素材を両方のチャンネルで使えば、電波は2つでも情報源は一つになる。

22社の意見を通して見えるのは、「制度として選択肢が増えるのはよい。ただし自社で使うかは別の話」という立場が多数を占めるという事実だ。業界が強く求めて実現した制度ではない。経営環境がさらに厳しくなったときのために、使えるカードを1枚増やしておく。その程度の意味合いである。(と、書けるのも楳田氏の分析あって。この場で感謝します)

10年後から逆算する

カードが1枚増えることは否定しない。問題は、そのカードを切っても出口が見えないことだ。10年後から逆算すると、それがはっきりする。

まず広告。2025年の日本の総広告費は8兆623億円で過去最高を更新したが、その内訳が問題だ。インターネット広告費が4兆459億円となり、総広告費に占める構成比が50.2%と初めて過半数を超えた。一方、地上波テレビは1兆6,333億円で前年比99.9%。大阪・関西万博と東京2025世界陸上という大型イベントがあってなお、横ばいである。

ここで押さえるべきは、放送事業収入の一つの核をキー局等からのネットワーク配分が担っている点だ。全国スポンサーの出稿はキー局を通じて系列に配分される。キー局の放送収入自体が縮小局面に入っている以上、配分の総額が痩せれば、ローカルの取り分は営業努力と無関係に痩せていく。

次に新聞の話もしておきたい。日本新聞協会の調査によれば、2025年10月時点の総発行部数は2,486万8,122部。2000年から25年で約54%減り、この1年だけで174.8万部、6.57%減っている。1世帯あたり0.42部で、平均すれば2世帯に1部も届いていない。

より重要なのは読者の年齢構成だ。新聞を毎日読む人の割合は、70歳以上で67.4%、60代で42.1%。30代以下になるとほぼ消える。つまり購読基盤は、若い世代に継承されていない、というより高齢者の寿命とともに消えていくのだ。団塊の世代は1947年から49年の生まれで、現在77歳から79歳。10年後には87歳から89歳になる。ローカル局より、地方紙の危機の方が早く来るだろう。

これは予測ではなく、人口動態から誰でも計算できる算数の話だ。2030年代半ばには、ローカル局も地方紙も、現行のビジネスモデルでは成り立たなくなる。そしてそんなこと私が言わなくても誰でもわかっているだろう。それなのに、未来の話をしなくていいのだろうか。

着地点は「ドネーション中心」のデジタルメディアしかない

では何に着地するのか。私の考えは表題の通りである。電波でも紙でもなく、デジタル上でオンデマンドにニュースを届けるメディアを、地域企業と市民の寄付で支える。その形に着地するしかないと思っている。
デジタルと書いたが、具体的にはデジタル+リアルメディアと言うべきだろう。地域が限定されているからこそ、デジタルだけでなくイベントなどリアルなコミュニケーションも含むメディアになるべきだ。

順に設計を書いていく。

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