その炎上はメディアのでっち上げだ!〜「おじさんの詰め合わせ」騒動に見る出版社の無意味な戦略〜

トラウデン直美の「おじさんの詰め合わせ」発言は炎上したのではなく、メディアが炎上したように見せただけだった
境 治 2024.08.29
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ネットは炎上の話題でいつも騒がしい。最近もフワちゃんやフリーアナウンサーの騒動が起きた。この2つは自らが起こした炎上と言ってよさそうだ。何しろ発言の内容が度を越していた。

だが一方で、実際には炎上と言うほどではない現象を、メディアが囃し立てることで炎上したように見える事例もある。先週、非常にわかりやすい事例があったので取り上げてみたい。

放送時「おじさんの詰め合わせ」は無風だった

8月21日放送のTBS「NEWS23」で自民党の総裁選ポスターが取り上げられた。「THE MATCH」のスローガンの周囲に自民党の歴代総裁の顔がモノクロで敷き詰められたビジュアルだ。

「時代は誰を求めるか?」とコピーが添えられているが、このキャンペーンは誰に向けられているかが謎に感じられる。このポスターを見た「NEWS23」のコメンテーター・トラウデン直美が「おじさんの詰め合わせ」と評した。たまたま番組を見ていた私は、自分もおじさんの一人であることも含めて「言われちゃったなあ」と笑って聞いた。トラウデン直美としても痛烈なひと言を言ってやったというより、軽口として言ったのだろうと思う。実際にビジュアルそのものがおじさんが目一杯詰め合わされているのだから、ちょっと上手いこと言った、という程度だ。これは酷いこと言ったなあとか、ましてや炎上しちゃうんじゃないかという空気はまったく漂わなかった。

私はテレビを見ながらXを眺めるのが常だが、この時に突然この話題がトレンド入りすることもなかった。

ちなみに私はトラウデン直美の「意識高い系ポジション」を取りたがる言動はちょっと気にはなっている。NEWS23にキャスティングされているのも、番組側が彼女にそのポジションを求める意図が見え見えだ。そんな風に斜に構えて彼女を見ている私でも「おじさんの詰め合わせ」は気にならなかったことは書き添えておきたい。

Smart FLASHの記事により存在しない炎上が発生

ところが翌々日、23日の朝、Yahoo!でこの記事を見かけた。

Smart FLASHから転載された、「NEWS23」でのトラウデン直美の発言についての記事で、「おじさんの詰め合わせ」の表現に批判が殺到したというのだ。それは違うだろう。私が見ていた印象とかけ離れているし、実際にその場でXで批判殺到など起こらなかった。なんだこの記事?

だがSmart Flashが「批判殺到」と書くと、炎上したように見えてくる。そしてYahoo!ニュースにはさっそく、何百ものコメントがついていた。その多くは「男性コメンテーターがおばさん殺到と言ったら差別と言われるだろう」という、それがなにか?と言いたくなる的外れなものばかりだが、記事に沿って批判するコメントだ。

つまり、放送時点では批判殺到していなかった発言が「批判殺到」と報じられることで実際に批判が殺到しているのだ。おかしなパラドックスになっている。「批判されてるぞ!」と大きな声で言うと批判されている状態が作られる。これは明らかに炎上のでっち上げではないか。

もうひとつ興味深いのは、記事の日時が22日の17時40分であることだ。21日夜の番組についての記事が翌日夕方になってやっと公開されている。放送を見ていた記者が「これは暴言だ!」とすぐさま書いたのではなく、おそらくネタ探しをしていたらXでの投稿を見かけて記事にしたのではないか。それがYahoo!への転載を経て放送の翌々日の朝になってようやく話題になっている。コタツ記事がすぐに話題になるのとは違い、時間がかかっている。

だがとにかく、23日朝になってYahoo!の記事が話題になり、炎上っぽく取り沙汰された。今回はXのトレンドに「トラウデン直美」「おじさんの詰め合わせ」などが入り、輪をかけて批判する投稿が出てきた。かくて「トラウデン直美がおじさんの詰め合わせ発言で炎上した」状態に至った。だが明らかに、発言が炎上したのではなく、発言を「批判殺到」と記事にしたから炎上した、ように見えているのだ。

Smart FLASH自身には炎上させる力はない

この記事を書くにあたり、Yahoo!のリアルタイム検索で「トラウデン直美」と入れて見た。すると、まず21日23時台に小さな山ができていて、彼女を批判する投稿があったことがわかる。

Yahoo!リアルタイム検索の結果画面をキャプチャー

Yahoo!リアルタイム検索の結果画面をキャプチャー

ただしその数は23件に過ぎず、さらにネガティブは57%だ。つまり13人程度の人が、放送を見ながら批判的な投稿をしたわけで、「批判殺到」は盛りすぎだ。

Yahoo!リアルタイム検索の結果画面をキャプチャー

Yahoo!リアルタイム検索の結果画面をキャプチャー

次に23日朝から24時間の「トラウデン直美」の検索結果を見ると、2254件で87%がネガティブ。まあ、これで炎上と言えるのかもしれない。批判殺到したのだろう。ただしトラウデン直美の放送での発言を見て、ではなく「批判殺到」の見出しを見て記事を読んだ人々の批判が殺到した。

そして、22日の後半にも小さめの山ができていることにも注目してもらいたい。これはおそらく、Smart FLASH本体の17時40分掲載の記事によるものだろう。なんだ、このメディア自身には炎上を起こす力はなく、Yahoo!に転載されてやっと炎上を引き起こせるのか。ゴシップメディアとして、ずいぶん情けない状態になっているようだ。

炎上を煽っても会社は赤字、だったら無意味

それは仕方ないだろう、ゴシップメディアとしてはビジネスなのだから。そんなことを言う人もいるかもしれない。ネットメディアは全般的に似たり寄ったりのことをやっている。そういう商売なのだ。文句を言ってもしょうがない。本当にそうだろうか?前にも見せたが、雑誌デジタル広告のデータをまたお見せしたい。

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