テレビが特定の政党に感情的になっても、利用されるだけだ

参議院選挙期間中の選挙報道についてです
境 治 2025.07.22
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参政党躍進の背景に、テレビでの露出を目論んだ彼らの戦略があった

参議院選挙では参政党が大躍進した。その理由は様々に分析されているが、この記事で大阪経済大学の秦正樹准教授が言っていることがわかりやすい。

一つ目が「地上波での露出」。二つ目が「日本人に刺さるキャッチコピー」、三つ目が「用意周到な地盤固め」です。
秦准教授コメントより

秦氏以外にも、テレビでの露出が多かったことを参政党躍進の一つの理由として挙げる専門家は複数いた。

政治評論家の田崎史郎氏は開票日翌日のテレビ朝日「モーニングショー」で、参政党の神谷代表に電話し、勝因を聞いたらこう答えたと言っていた。

ぐっと伸びたのはメディアにたたかれたから。たたかれたことで党員が燃えた。もしたたかれていなかったらここまでは伸びていなかった。
田崎氏が紹介した神谷代表のコメント


参政党は決してSNS活用だけで伸びたのではない。まず5年間かけて日本各地に張り巡らされた支援者の組織がある。選んだ各候補が選挙期間中、勢力的に演説して回ったことも大きい。こうした「リアル」での地に足のついた地道な活動がまず第一の躍進理由だ。そしてやはりSNS活用の巧みさも重要だ。

だがここまで議席を伸ばしたのは選挙直前からのテレビでの露出があったからだ。

重要だったのが、維新所属だった参議院議員・梅村みずほ氏が維新公認を外され、6月に参政党に鞍替えしていたことだ。これにより、国会議員数が5名になり「国政政党」の要件をクリア。

7月の公示日直前に各テレビ局で行われた党首討論会に神谷代表も8番目の党首として滑り込んだ。社民党は外れ、日本保守党もそこにいない。

党首討論会に大政党と共にテレビ画面に並んだことで、まっとうな政党、メジャーな政党の一つとして認識されることになった。国政政党の要件を満たしているのだから、討論会を主催するテレビ局としても仕方なく招いたのだろう。

党首討論会が、参政党がテレビを利用した第一段階となった。

「外国人問題が争点に急浮上」の報道で、たたかれて勢いがついた

選挙戦の中盤、7月10日をすぎたあたりから、今度はテレビの選挙報道の中で「外国人政策が争点として浮上」と報じられはじめた。あるニュースでは、Xを分析すると参議院選挙についての投稿の中で「外国人」のワードが急増している、と報じていた。

もちろん参政党が演説の中で取り上げているからだが、いまのXでは「外国人問題」のような尖った議論が盛り上がりがちだからだ。また人々の関心は必ずしも外国人排斥にあるわけではなく、オーバーツーリズムの困惑や過剰な不動産投資についても含まれる。だが「外国人問題」が争点になっているのは参政党が主張している「日本人ファースト」が差別的だ、とやや感情的に取り上げる場面が垣間見えた。

その最たる例が先週取り上げた12日のTBS「報道特集」だった。

この報道は、参政党がBPOに訴えたこともあり、様々なネット記事で取り上げられた。その結果、「オールドメディアが参政党を非難した」とのイメージがネットでばら撒かれ、参政党に利することになったと思う。先述の田崎氏に神谷代表が語った内容のように、参政党自身もそのことを自覚していた。ひょっとしたら「報道特集」の放送を見て彼らはしてやったりと思ったのかもしれないとさえ疑ってしまう。

それくらい、テレビ報道は利用されてしまったのだ。はっきり言って「報道特集」は幼すぎると私は感じた。ネットの時代になり、テレビで報じたことがどのように伝わりどのような影響をもたらすか、想像するべきだ。正しいことを正しく伝えればいいと思ってだろうが実際にはかなり感情的な正義感が立ちすぎていて、反感を呼んでいた。今の時代、過剰な正義感は無駄なハレーションを起こすと知っておくべきだ。

冷静に分析するような伝え方をしないと、あちら側の思う壺だ。まあ、そんな反省などしないのだろうが。

テレビがすべき選挙報道は、冷静な情報のネット展開だ

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