7月12日の「報道特集」は批判されても仕方ないし逆効果でもあったと思う

まず前もって言っておきたいのは、私はこの場で何度も書いているように、選挙期間中にこそ選挙報道を積極的にすべきだと考えている。また、在日韓国人の友人もいて、外国人差別はあってはならないと思う。
それでも7月12日に放送されたTBS「報道特集」は選挙期間中の報道として明らかに特定政党を批判、というより非難していたうえに、対立を煽って参政党支持者を増やしてしまった可能性もあると見ている。
「外国人ファースト=外国人排斥」と決めつけたに等しい
この日の特集<「選挙運動の名のもとに露骨なヘイトスピーチが」参議院選挙 急浮上の争点“外国人政策”に高まる不安の声>は28分丸のままYouTubeに置かれている(TVerにもある)。
サムネにある通り、参議院選挙で争点に浮上している外国人規制を批判している。外国人規制を主張する政党として参政党が名指しで取り上げられた。大まかに構成を書き出しておく。
・立教大学砂川ゼミで学生の政党分析
・参政党の「日本人ファースト」
・外国人優遇は誤りとのデータ
・大学教授「日本人ファーストは差別を煽動」
・研究者支援制度で生活費援助から外国人を除外
・日本人学生コメント「日本人ファーストで日本は良くならない」
・日本改革党の政見放送での露骨なヘイトスピーチ
・川崎市のヘイトスピーチ抗議運動
・選挙演説でのヘイトは止められない
・在日3世の金さんの帰化と都議会議員立候補に対する差別
私がまずいと思ったのは、これは選挙報道なのか外国人排斥への批判なのか明確でないこと。というより一緒くたにしていてかなり雑に見えた。その中で結果的に参政党を批判している。これでは「政治的公平」に欠けていると言われても仕方ない。
私は選挙期間中に選挙報道を積極的にやるべきだと思うし、「公平」を「量的公平」に解釈して正確な秒数を測るのは無意味だと思う。そんなことは気にせず有権者に有益な報道をどんどんやってほしい。
だが今回の「報道特集」の放送は、明確に参政党を非難していた。彼らの巧妙なワーディング「日本人ファースト」は直接的に外国人排斥とイコールとはしていない。それなのに、参政党の「日本人ファースト」をことさら取り上げて、それと外国人排斥を問題視する報道を並べている。その中で、たとえば大学生の「日本人ファーストを掲げても日本は良くならない」という発言を取り上げている。
はっきり言うが、恣意性の塊のようなコーナーだった。報道としてあまりに拙い。これでは「政治的公平」を保っているとは、視聴者としても思えない。反感さえ持った。
選挙期間中に露骨に参政党を非難する放送は本当にまずい。そしてさらにまずいのは、参政党が堂々とクレームをつけてきたことだ。
「番組の構成・表現・登場人物の選定等が放送倫理に反するものであるとして、TBSに対して厳重に抗議し、訂正等を求める申入書を提出しました」とある。これに対してTBSはどう応じるのだろう。どうするにしても、政党側に「つけいるスキ」を与えてしまったことは大きい。番組を見た人がこの申入書を読んだら「わからなくもない」と思うだろう。そんなスキをつくってしまったことはあとあと、大きな影響をもたらすだろう。本来、選挙報道について政党はよほどのことがない限り内容に口出しをしてはならないと思う。だがこの「報道特集」は「よほどのこと」だった。
そして他の政党は参政党が言うならと、今後いっそう報道内容に目を光らせるだろう。選挙報道全体をまた萎縮させかねないとも思う。
参政党支持者を増やしてしまい、逆効果だった
さらにもっとまずいのが、この放送により結果として参政党支持者を勢いづかせ、無党派層の一部が支持に回る可能性が高いことだ。参政党を批判する報道が、逆に彼らに有利に働いたかもしれないのだ。
Xでは「報道特集」がトレンド入りすることは日常茶飯事となっている。もちろんその中には「#報道特集がんばれ」とのエールも数多く入っている。だが7月12日の放送以降は「偏向」と批判する投稿で大きな盛り上がりが続いた。明らかに偏向と言われても仕方ない内容だったため、参政党支持者が勢いづいているのだ。
「報道特集」を批判しがちな右寄りの人々が必ずしも参政党支持者とは限らない。だがこの「勢い」を見て自民党や維新から参政党に「鞍替え」する人も出てくるだろう。「叩く側」に回りたいからだ。
さらに、若い無党派層の中には左寄りの心も右寄りの心性も併せ持つ人は多いだろう。人間はそう単純に右の人と左の人に分かれるものではない。どっちの言い分にも理解できる部分があれば両方の間で揺れるものだ。
揺れてる人が12日の「報道特集」を見たら、むしろ参政党に惹かれるのではないかと私は思った。大きなメディアが小さな政党をいじめていると感じられる。少なくともあれを見て作り手の意図通り「参政党の日本人ファーストは外国人排斥なのか、けしからん」と思う人は少ないだろう。構成に無理があるからだ。「なぜこの番組は日本人ファーストと外国人排斥を無理に結びつけようとしているのだろう」と、私が受け止めたのと同じ感想を持つ人は多いと思う。
もう一つ、「報道特集」の「上から目線」もマイナスに働く。若い人はこういう点に敏感だ。年配の男性のキャスターがこの日も「〜な社会であってはならないと思います」と紋切り型の言葉で締めていたが、それがどれだけ上から目線に見えるか、スタッフで議論して見直したほうがいい。進化することを考えないと、時代に取り残されてしまう。
暴走気味の「報道特集」は自分たちを振り返ったほうがいい
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