2026年度1Q決算はフジが復活し4局は大幅ダウン、だがコロナ前から見るとフジの一人負け

前年比では見えないことが中期変化から見えてきます
境 治 2026.08.14
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多くの記事で”フジは戻った”と評されるが・・・

2026年度第1四半期の在京キー局5社の決算が8月7日に出そろったが、これを伝える記事の見出しはどこも似ていた。フジテレビが黒字転換、他4局はスポット収入が軒並み2桁減。「フジ復活」と「4局反動減」の二語でまとめられる決算だった。
だが1年前との比較で語れることは、この決算に関してはほとんどない。前年である2025年度1Qは、例の事案でフジへのCM出稿が止まり、その需要が他局に流れ込んだ、どこから見ても異常な四半期だったからだ。異常値を基準にした前年比は、「事態が収まったのでもとに戻った」という当たり前のことでしかない。
そこで今回、2019年度1Qまで遡った8年分の時系列で見てみた。コロナ前を起点に置くと、単年の増減では見えないものが出てくる。見えたことをじっくり書いておきたい。

2026年度1Qの数字を確認する

2026年度1Qのスポット収入は、フジを除く4局がそろって大幅減だった。日本テレビが311億9,800万円から273億9,100万円へ12.2%減、TBSテレビが223億5,000万円から196億8,700万円へ11.9%減、テレビ朝日が257億7,100万円から201億6,800万円へ21.7%減、テレビ東京が76億9,600万円から59億6,000万円へ22.6%減。4局を単純合算すると870億円から732億円へ、15.9%の減少である。
一方のフジテレビは、放送収入が59億6,800万円から342億7,600万円へと5倍以上に戻した。ただしこれを「回復」と呼ぶかどうかは基準の取り方次第だ。フジ自身は事案前の2024年度1Qとの比較で説明しており、タイムが96.5%、スポットが97.6%、合計では97.1%の水準としている。つまり事案前にほぼ戻ったが、まだ完全には届いていない。
TBSは決算で中東情勢の緊迫化による広告市況の軟調を挙げ、通期業績予想を下方修正した。米国のイラン攻撃に端を発する世界情勢の不透明感が、企業の広告出稿を抑制している。これは事実だろう。ただ、それがどの程度の要因なのかは、単年では判別できない。
だから遡ってみたい。確認するなら、コロナ禍前からだろう。

8年並べると「乱高下のあとの凪」が見える

※各局数値は億円未満を四捨五入しているため、各局の表示値の合計と5局計が一致しない場合がある。5局計・4局計・指数は百万円単位の元データから算出。

5局合計の1Q放送収入は、2019年度の2,105億円が起点だ。コロナ禍の2020年度に1,656億円まで一気に落ちる。指数にすれば78.7、2割以上の急落である。そして2021年度には2,055億円、指数97.7までほぼ全戻しした。ここまではよく知られた動きだ。
問題はその先である。2022年度1,967億円、2023年度1,855億円、2024年度1,856億円。そして2025年度はフジの異常値で1,684億円まで沈み、2026年度は1,847億円に戻った。
つまりコロナからの回復のあと、キー局の放送収入は一度も2021年度の水準に戻っていない。それどころか2023年度以降は、1,855億円・1,856億円・1,847億円と、2025年度を除きほとんど動いていないのだ。
フジの異常値を除いた4局計で見ると、この「動かなさ」はもっとはっきりする。2023年度1,494億円、2024年度1,503億円、2026年度1,504億円。3年間の変化はプラス0.7%、ほぼ完全な横ばいである。前年比で15.9%減という激しい数字の正体は、要するに2025年度に流れ込んだフジ分が戻っただけだった。

「横ばい」は安定ではなくシェアダウン

横ばいと聞くと踏みとどまっているように読めるが、そうではない。
第一に、この3年の横ばいは、コロナ前から1割落ちた場所での横ばいである。5局計は2019年度の2,105億円から2026年度の1,847億円へ、258億円、12.3%減った。年率にすれば1.9%。急落ではなく、ゆっくりとした失血だ。
第二に、内訳を見るとタイムよりスポットの落ち込みが大きい。2019年度比でタイムが89.4、スポットが86.1である。スポットは景気連動性が高く、市況が戻れば戻るはずの収入だ。7年経っても戻っていない以上、単なる景気循環だけでは説明しにくい。広告費のデジタルシフトを含む構造変化が大きく作用していると見るべきだろう。
第三に、2026年度のタイム増には注意が必要だ。5局計のタイムは2024年度の917億円から2026年度の939億円へ2.4%増えているが、日本テレビはFIFAワールドカップ2026などの寄与で、1Qのタイム収入全体が約275億円まで膨らんだ。日テレを除く4局のタイムは、2024年度比で0.9%減。大型イベントがなければ、タイムも下を向いていただろう。
同じ期間、日本の総広告費は2019年の6.9兆円から2025年には8.1兆円へ約16%増えている。市場そのものが拡大するなかでキー局の放送収入が1割以上縮んだのだから、広告市場に占める地上波テレビのシェアは明らかに低下した。ちなみにインターネット広告は2019年の2兆1,048億円から2025年4兆459億円とほぼ倍増している。それと比べるとテレビ広告市場は大きく存在感を下げたとも言える。

局別に開くと、1本だけ違う線がある

2019年度を100として2026年度の水準を並べると、こうなる。

  • TBSテレビ 93

  • 日本テレビ 91

  • テレビ朝日 91

  • テレビ東京 89

  • フジテレビ 75

4局はきれいに89〜93のレンジに収まっている。この4局の差は、番組編成や営業力の巧拙というより、同じ市場環境に同じように晒された結果と見るのが自然だろう。落ち方が揃っているのだから、これは業界共通の構造要因だ。
ところがフジテレビだけは、他局から15ポイントほど離れたところにいる。
ここで「2025年の事案があったのだから当然だろう」と考えたくなる。だが時系列を見ると、そうではないことがわかる。フジの指数は事案の起きる前、2023年度の時点ですでに79.1、2024年度は77.3だった。4局が90前後にいたときに、フジはすでに77だったのだ。
つまりフジテレビは、事案によって落ちたのではない。事案の前から、他局の2.6倍の速さで放送収入を失い続けていた。少なくとも、現在の低水準を事案だけで説明することはできない。

もう一つの角度から見る。5局計で失われた258億円のうち、フジテレビ1局が114億円、実に44%を占める。日本テレビが55億円で21%、テレビ朝日が40億円で16%、TBSが29億円で11%、テレビ東京が19億円で8%と続く。
キー局全体の放送収入の目減りは、その半分近くがフジ1局の落ち込みで説明できてしまう。逆に言えば、フジを除いた4局の減り方は、7年で8.7%にとどまっている。

フジ以外の4局——「猶予がある」のは今だけだ

ここから何を読むか。フジとフジ以外の4局に分けて考えてみたい。

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