広陵高校を甲子園辞退に追い込んだ、Xの恐るべきニュース製造力

高校野球の真っ最中に、広島代表の広陵高校が出場を辞退したことはみなさんご存知だろう。
私は1人のXユーザーとして、この話題に気づいた。何日だったかは憶えてないが、8月2日とか3日とか、とにかくXの「おすすめ」に激しい投稿が流れてきて、こんなことが許されるのか!とコメントしつつ、高校生の親の投稿が紹介されていた。Xでの投稿そのものではなく、Instagramの投稿のキャプチャーを紹介していたと思う。
数日と経たないうちに「広陵高校いじめ騒動」は大炎上となり、拍車がかかっていった。それはひどいなあと思っていると、いじめた側の高校生の写真も出回り、天罰を下すように晒されていた。これもいじめじゃないのかと思った。
8月5日になると投稿数はX全体を埋め尽くさんばかりに増え、翌日には学校が事実として公表した。そして7日に広陵高校は甲子園で一回戦を戦い勝利している。そこから先は10日に高校が会見で辞退を発表するまで、X 上もマスメディアも大騒動だった。
甲子園出場校を辞退に追い込んだSNSの功と罪
ここ数年、SNSの強大な力が様々な事態を巻き起こしてきたが、まさか甲子園の常連校を出場辞退に追い込むとは。これについて前向きに捉えれば、いじめ被害者の告発を人々の声が盛り上げパワーアップした成果だとも言える。
だが実際に辞退に追い込んだのは、寮の爆破予告や登下校中の誹謗中傷などだ。生徒に実害が及びかねないから辞退を決めたという。
仮に被害者の告発をリポストする際に学校を批判するのが正義だとしても、爆破予告や生徒への誹謗中傷はまったく正義とは言えない。犯罪手前の行為だ。SNSの美しい勝利などではまったくないだろう。
SNSは、悔し涙を流していた人の小さな声を取り上げ、大きな波に拡大させるすごい力がある。ただし、拡大させるのは人々の怒りだ。なんてひどいことが起こってたんだ!成敗すべきだ!そんな正義感が小さな声をとんでもなく大きな拳に拡張させる。
それがSNSの中で閉じているうちはいいが、正義感が今度はあるまじき誹謗中傷を生んでしまう。中傷する側は、自分は正義であり相手は悪なのだから何を言ってもいいと、度を超えた言葉で相手を撃ち抜く。
まだ相手が悪かどうかは決まっていないし、悪だからと言って何をしてもいいわけでもない。二重に誤った倫理観で、現実に行動を起こしてしまうとどちらが悪かわからない、おかしな事態に陥る。
SNSが悪を暴くこともある。強大で1人では到底敵わない相手を倒せるなら、SNSは頼もしい武器だ。だがそのSNSに突き動かされて、自分は正義だからと正義とは言えない言動をしでかしてしまう。広陵高校の一件はまたSNSに新たな1ページを加えた。この制御不能の暴れる竜を、私たちが乗りこなす日は来るのだろうか。
煽るだけのマスメディアは、SNSの尻馬に乗っただけではないか
今回また興味深かったのがマスメディアだ。当初はほとんど反応しなかった。SNSで名門校のいじめ事件が騒がれていたのに、ニュースにも記事にもならなかった。
8月6日、高校側が事件があったことを公表するとマスメディアは一斉に報じた。Xで投稿を数日間見てきた私からすると、今さらとしか思えなかった。遅すぎでしょう。
そこから先は、逆に連日湯水のように報道が相次いだ。しかも言い方がひどい。特に8月10日の広陵高校の校長会見後は、バッシングと言っていい状態だった。
TBSの「NEWS23」で東大の斎藤幸平准教授が高野連のことを「ダサい組織」と言ったそうだ。そのことをまたスポーツ紙がコタツ記事で伝えている。それがまたXで拡散され、高野連も広陵高校も叩かれている。叩きまくられている。
SNSの誹謗中傷も問題だが、マスメディアの報じ方も誹謗中傷とさしたる違いはないのではないか?高野連は「ダサい組織」、広陵高校は「被害者ヅラ」で「逆ギレ会見」。当初はまったく報じなかったくせに、報道を始めると実にひどい言葉でののしる。しかも大学教授やX投稿など他人の発した言葉を使って。これ言ったの、自分じゃないすからねーと、ちゃっかり舌を出している。
SNSで誹謗しまくられ、マスメディアからは中傷しまくられる。誰もその言葉には責任を取らない。
広陵高校の一件は、今のSNSとマスメディア、その相関関係も含めてメディアの情けない状況を示す事例となった。SNSがニュースを生み出し、現実の側がそれに反応し、マスメディアはそれを受けて報道する。ニュースを生み出すのはもはやマスメディアではなくSNSなのだろうか。
Xをニュース製造マシンにした仕様変更
XはTwitterの時代からネットで騒動を生み出し、拡散させてきた。Xになってからは数々の仕様変更でますます騒動の震源地になった。そして最近、この仕様変更で毎日ニュースを生み出す装置になった。
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