アニメクラスターに教えてもらった「果てしなきスカーレット」不発の理由(と、テレビと映画の関係)
映画「国宝」が日本映画実写興行収入記録を塗り替え「踊る大捜査線 THE MOVIE2」に代わって1位に立った。そのことを東洋経済オンラインに書いたのだが、同じ週末に細田守監督の新作「果てしなきスカーレット」が不発だったことも絡めた記事にした。私としては「国宝」が主で「スカーレット」は従のつもりだったが、編集部では「スカーレット」をタイトルの先に持ってきた。
するとX上でいつもの記事よりずっと反応が多かった。普通は記事のタイトルを検索して、その反応をこっそり覗き見する。
ところが今回は、私のアカウントに直接反応が来た。これは心臓に悪い。私は2009年以来、Twitter時代からのXユーザーだが、最近の雰囲気が怖くて前ほどリプライに反応しなくなった。反応する場合はアカウントのプロフィールや過去投稿を見て慎重に言葉を返している。
それがこの記事については次々に反応があり恐ろしくなった。私が何をしたというの?
意外にも書きながら泣いてました。時代が終わったんだなという感慨で。 toyokeizai.net/articles/-/920… 『果てしなきスカーレット』の大コケと『国宝』の興行収入記録更新が示唆する「テレビ局と日本映画の幸せな時代」の終焉 11月25日、映画『国宝』が新たな記録を打ち立てた。2003年の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッ toyokeizai.net
どうやら、私のこの投稿がXのなんらかのアルゴリズムによって「おすすめ」に押し出されたのだろう。表示数が49万にもなっている。この投稿にリプライがついたり、引用投稿したりが続いた。滅多にないのでおそれおののいた。
みなさんから「スカーレット」不発の理由を教わった
幸い、反応の多くは記事への共感、納得だった。そして中には「スカーレット不発の理由」を推測したり考察してくれる人もいた。私は記事の中で「公開時の口コミが日テレのメディアパワーを凌駕した」ようなことを書いたのだが、口コミが広がる前の初日から劇場に人が来ていなかったのだから、公開の前に「不発」は決定していたのでは、というのだ。
実は記事を書きながら自分でも不思議には感じていた。公開初日に劇場で閑古鳥が鳴いていたとの報告もあった。口コミが広がる前に、「スカーレット」は集客に失敗していたのだ。
皆さんの意見を集約し、私の主観も混ぜるとこんな展開だったようだ。
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かねがね細田守作品への疑問が言われていた。特に自身で脚本書くべきではないとの声があった。
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「竜とそばかすの姫」の評価が芳しくなかった。細田脚本によるものとの声が高まった。
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新作「果てしなきスカーレット」の予告編が過去作とまったく違う世界観である上に、つまらなそうだった。さらに脚本も細田守とわかった。この時点でアニメクラスターの人々は見離した。
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新作の予告編はファミリー層にも「子供を連れて行く作品ではない」と思われた
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過去作を金曜ロードショーで毎週放送するたびに流れる予告編で3と4の印象は決定的になった
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公開初日から劇場は閑古鳥状態になった
さて、実際に劇場で見た人には賛否両論あり、これはこれでよかった、という声も目にする。それを見ると、この作品は戦略的ミスで興行が失敗したと言えるのではないか。少なくとも、これまでとはちがうプロモーション戦略が必要だったのに、これまでと同じ戦略をとってしまった。だから興行の不発は、細田監督自身というよりプロデュースサイドの問題ではないか。
これは私の推測であって、取材もしていない中であまり不用意に言うべきことではない。ただ、前作が66億円ものメガヒットになったことからすると、「スカーレット」の不発は残念極まりない。「デジモン」以来のファンとして、悲しむより他ない。
ハリウッド映画こそ、テレビの力が必要だった?
ところで、アニメクラスターの方から、もう一つ教わったことがある。
ハリウッド映画はこのところ、まったく振るわない。そのことと、テレビ局のメディアパワー失墜を結びつけて考えたことがなかった。ハリウッド映画好きとしてはもう少し聞いてみたい。するとAnimeCultureさんはこんなことを言う。
ああ、なるほどと得心した。我々ハリウッド映画好きはコミュニティを形成できていないのだ。だからテレビCMでプロモーションするしかない。実際、ハリウッド映画は公開2週間前からかなりの規模でテレビCMを打っていた。
ところがコロナ禍以降急激にテレビがメディアパワーを失った。するともはや、テレビCMを打っても効果が出ない。アニメはファンコミュニティがあるのでテレビCMをさほど打たなくても自然発生的に情報が飛び交う。ハリウッド映画はテレビCMを打つ以外、他に手がないのだ。
今年で言うと私の最大のおすすめ作は「ワンバトルアフターアナザー」だ。
見終わって映画館を出ながら、これはハリウッド映画久々の1位スタートのはずだ、と信じて疑わなかった。ロングランになるかも、とさえ思った。ところが、公開時に8位になんとかランクインしたのち、ベスト10から消えていった。そんなことがあっていいのか?私は憤った。北米はじめ世界で大ヒットしているのに、あっさり圏外に落ちるとは。日本の映画市場、どうかしてる!
だがしかし、地上波テレビが強いのも日本くらいで、他の国ではテレビと関係なく映画がヒットしているということだ。それはなんなのか?いったい日本でなぜここまでハリウッド映画が見られなくなったのか?もう少し考えてみる必要がありそうだ。
ハリウッド映画を教育した日本の「洋画劇場」
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