NetflixがWBCで、なりふりかまわずマジョリティをとりにきた

NetflixがWBCで何を狙っているかについての記事です。
境 治 2026.02.27
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想像以上に力を込めてWBC配信に臨むNetflix!

2月半ば、Netflixが開催した合同インタビューに参加した。WBC開催が迫ったタイミングで、どんなライブ配信をするか、媒体社の記者やフリーランスのライターを集めて説明会を行ったのだ。
私は正直、野球観戦への興味が薄く、WBCをやや引いた目で見ていた。そんな私でも、この催しで発表されたメニューには感服した。WBCを機にNetflixはできること全部やるんだな。その意気込みに気圧された。いつもクールな空気を漂わせるNetflixの人びとが、ちょっと熱くなってる?そんな風に受け止めた。
WBCライブ配信に日本テレビが制作協力すると前に聞いた時は驚いた。ネット記事では「日テレが下請けに」と揶揄気味に書かれていたが東京ドームを知り抜いた日テレ・クオリティで試合を見せてくれるのだと思っていた。
だが発表された新たな撮影手法は通常の野球中継にはないものだ。立体的なリプレイを見せるボリュメトリックビデオ、ホームベース周辺に設置したダート・カメラ、上空からプレイを撮影するインドアドローンなど、見たことがない迫力あふれる野球中継が見られるのでは?と興味がないなりにそそられた。
そして実況解説のメンバーにまた驚いた。

画像:Netflix提供

画像:Netflix提供

解説者とアナウンサーのオールスターメンバー。野球を知らない私でも見たことある面々だ。日テレが協力するのだから村山喜彦アナ、平川健太郎アナが”登板”するのは当然かもしれないが、TBSのOBでスポーツ実況のレジェンド、松下賢次アナの名が並んでいるのは驚いた。まるでアベンジャーズだ。

ケン・ワタナベが生Zoomで記者たちの前に登場

そして最も驚いたのが、渡辺謙が生Zoomで登場したことだ。

画像:Netflix提供

画像:Netflix提供

宮崎キャンプにいる渡辺謙が、進行役のNetflixの坂本和隆氏とやりとりを始めた。この催しに来たのは数十名、その記者たちのために世界のケン・ワタナベが時間を割いてくれていることに驚いた。
さらに続々発表された施策はすでに報じられている通りだ。全国150箇所で開催するパブリックビューイング。これは前に選手ゆかりの自治体でやると言っていたのを拡大している。あなたの近くのイオンでもやるかもしれない。
そしてキャンペーンプランとしてワンコイン、498円で広告付きプランに加入できると発表した。3月18日までの期間限定、まさにWBCを見たい人に用意した価格ということだ。
関連番組を次々に配信するのもNetflixらしい力の入れ方だ。見ていると絶対にWBCを見たくなるだろう。渡辺謙と二宮和也がアンバサダーに選ばれたのも、こうしたコンテンツのガイド役を務める意味もある。宮崎キャンプに行くほど野球好きだからこその役回りだ。

なりふりかまわずマジョリティを獲得

発表会の後半は、質疑の時間に充てられた。「タッチ」についての質問が出た時が面白かった。Netflixの大会応援ソングとして「タッチ」が選ばれ、それを稲葉浩志が歌う。なぜ「タッチ」だったのか。この質問に坂本氏が「WBC担当チームから提案された時は『タッチ』?と思った」と苦笑しながら語った。「でも説明を聞いて稲葉さんによる『タッチ』にパッションを感じました」と答えた。質問の答えにはなっていないが、なるほどと私は勝手に納得した。
Netflixの大会応援曲が「タッチ」に決まったと聞いた時、私は引いた。Netflixがそんなことするの?そこまでやるの?そんなベタな選曲をNetflixがするの?そう感じたのだ。
勝手な想像だが、坂本氏も最初は同じように感じたのではないか。だがチームの提案をきちんと受け止めて考え、そうか、それでいいんだ、と判断したと推察する。NetflixがWBC独占配信というチャンスを得て、その価値を最大化するには、こういうベタなこともやるべきだ。そんな考えだったのではないか。

この企画は大成功している。あちこちのメディアがこぞって取り上げ、絶賛している。ベタなプロモーションこそがWBCに向けて必要なのだ。
その後も続々、企画が続く。「タッチ」のアニメが3月3日から配信開始される。

糸井嘉男と、かまいたちの濱家隆一、そして吉田沙保里によるプレミアムトークも配信中だ

こんな企画がきっと、3月5日のWBCスタートまで、いや終了する3月18日までずっと用意されているのだろう。その終着点が、これだ。

これはスマホでNetflixに登録するためのハウトゥー映像だ。ここに、いまのNetflixの目標が集約されている。WBCを通じて彼らが相手にしたいのは、プロモーションに接した後で「それでどうしたらWBCが見られるんね」と聞いてくる人々なのだ。私のように映画やドラマが好きな人間が10年前から使い続けているこのサービスにこれまで何の興味も示さず、接触する機会もなかった人々。これまで「ストレンジャーシングス」にも「地面師たち」にもまったく触れることさえなかった人々。
そんな層にアプローチしようとなりふりかまわず、Netflixとしてできることはすべてやろうとしている。マーケティング的に言うと、もうアーリーアダプターは獲得して、アーリーマジョリティにも食い込めている。次はいよいよレイトマジョリティにもしっかり橋頭堡を確保する。WBC独占配信はそのための絶対に生かさねばならない弾丸だ。

イノベーター理論の図(ChatGPTにより作成)

イノベーター理論の図(ChatGPTにより作成)

そう考えると、今度こそテレビ局が黒船に震え上がる時ではないだろうか。

テレビ広告市場がいよいよ脅かされるのか?

WBCによってマジョリティを会員にすることができれば、広告市場にも影響が出るのではないか。何しろ、WBCライブ配信ではテレビの野球中継のようにCMが流される。しかも広告付きプランの会員だけではない。全会員にCMが流される。そのリーチは莫大なものになるだろう。
広告については、広告事業責任者である田中俊之氏に先日特別に取材させてもらった。

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