YouTubeを分析せよ!エビリーのkamui trackerはマーケティングにも世の中を知るにも役立つ

元読売テレビ・西田二郎氏が顧問に就任したエビリーとは?
「ダウンタウンDX」の制作者として知られる西田二郎氏は3月まで読売テレビの社員だったが、定年直前で退職した。私は10年以上のつきあいがあり、活動を取材したり、仕事でもご一緒してきた。北海道テレビの藤村忠寿氏となぜかテレビ埼玉で「たまたま」という番組を作ったり、Njの名で音楽活動もやっている。
元々自由に活動していた西田氏だが、退職して何をするのかと思っていたら株式会社エビリーの顧問になったという。
エビリーの社名を私はうっすら知っていた。企業のYouTubeチャンネルの仕事をやっていた時に、名前が何度か出て興味を持ったが、そのままになっていた。
西田氏がエビリーのオンラインセミナーに5月20日に出演するというので、聴講した。(トップ画像はその一コマ)
相変わらず西田氏がしゃべり倒して面白かったのだが、最初のほうでエビリーの分析による「ここ数年で政治やニュースのチャンネルの視聴回数がこんなに伸びた」というデータが示された。

セミナーで示されたグラフから政治関連の動画視聴回数が急増していることがわかる(画像提供:エビリー)
え?そんな分析できるの?そこに私は驚いた。そこまでのデータはGoogleじゃないと取れないのでは?兵庫県知事選のあとで、テレビや新聞はオールドメディア扱いされ、YouTubeが選挙を動かしたと言われた。確かにもはやYouTubeの影響力は政治の領域でも重要になっているが、その分析は簡単にはできない。
エビリーはYouTubeの分析ツールを提供しており、マーケティングに役立つようだが、政治も含めた多様な領域に活用できるのではないか。ポテンシャルの高いツールだと直感した。そんな興味で、エビリーに取材をお願いしてみた。
YouTubeのAPIと独自のアルゴリズムで詳細な分析ができる
エビリーのマーケティング部長佐野智子氏とは前職の頃から面識があったこともあり、取材は和やかに進んだ。

左から、アカウントセールス村上優香氏、マーケティング部長佐野智子氏、WEBマーケティンググループマネージャー川上洋介氏
エビリーは企業に対し動画配信サポートを提供する会社で、企業内でクローズドに動画を配信・共有できるmillviと、YouTubeを多面的に分析できるkamui trackerが主力製品。私の興味の対象は後者ということになる。
kamui trackerは登録者数1,000名以上のYouTubeチャンネルが自動的に分析対象になる。企業がYouTubeを活用してマーケティング活動を行う際に、競合企業のチャンネルの分析や、商品紹介を依頼するのに適したYouTuberの分析などができる。また自社でYouTubeチャンネルを運営する際に、どんな企画が再生回数を獲得できるかの調査にも役立つ。

その分析には、当然エビリーが独自に磨いてきたアルゴリズムやAI学習モデルなどを駆使するわけだが、YouTubeの公開APIに接続し基礎データを獲得していることも大きい。私がセミナーで驚いたのも、YouTubeから直接データを取れるからなのかと非常に得心した。ただそれにしても、他では見ない詳細な分析ができるのはなぜだろう。
エビリーは2006年創業の会社で、2016年からkamui trackerのサービス提供を開始。YouTubeからのデータ取得には一定の制限があり、これを解除するにはYouTube側の監査を受け承認を得る必要があるという。kamui trackerは現在約5万人のユーザーに利用されているなどの実績からこのハードルを乗り越え、かなりのデータ量を取得できる状態になっているそうだ。だからディープな分析ができるのだ。これは大きな資産といえるだろう。
企業がテレビCMをマーケティングに役立てる際には視聴率と、最近は様々なデータが手に入るのでそれらをもとに考えることになる。また番組を作る上でも、性年齢別の個人視聴率をもとに、次回はこうしようと企画する。データはCMにも番組にも必要なわけだが、いまやYouTubeの活用にもデータが欠かせない。kamui trackerのニーズは今後高まりそうだ。
またエビリーでは分析ツールの提供だけでなく、その分析を元にしたYouTubeでの動画制作も企業から受託している。ただ、動画制作はデータ分析だけでなく、クリエイティブの力でもっと楽しく面白くできるのではとの思いもあるという。西田二郎氏の顧問就任は、テレビの制作力を生かすことでもっと心を動かす動画ができるとの期待からだ。テレビで培った力が、企業向け動画にどう生きるか、期待したいところだ。
一時的な再生数より、恒常的なエンゲージメントが大事
kamui trackerでは、エビリー独自の数値としてエンゲージメント数も見ることができる。企業が具体的な成果を得る上で、再生数と同じかそれ以上にこのエンゲージメント数が大事だ

kamui trackerのダッシュボード画面、右上が平均エンゲージメント数(赤枠は筆者が付加)
企業のYouTube活用は2010年代から行われてきたが、当時は「いかにバズらせるか」ばかりが注目された。だがバズるには偶然性に頼っていたし、一時的に爆発的な再生数が得られたとしても資産にならず長期的な効果は薄かった。その商品と関係がない人まで集まってしまうからだ。
エンゲージメント数はコメント数といいね数を足したものだが、そういう具体的なアクションを起こさせるほうがバズるよりユーザーと関係を結ぶことになる。
最近はBtoCではなくBtoB企業がYouTubeを入り口に契約獲得に至る成功事例も出てきているという。YouTubeをネットマーケティングのツールの一つと考えれば、BtoBでの活用は当然の帰結かもしれない。もはや老若男女がYouTubeを当たり前のように見ているし、企業の側も業務に役立つ情報を得る場として活用している。
BtoBのコミュニケーションでは何十万回も再生されて関係ない人に見られるより、本当に自社のサービスに興味を持ってくれる数社に出会うことが重要だ。その際に役立つのがエンゲージメント数なのだ。
BtoB 企業の成功例として名前が出てきたのが製造業のミスミ。エビリーでは動画制作の一部をサポートしているそうだ。meviyという製品のチャンネルを運営して話題になり、日経クロストレンドのBtoBマーケティング大賞を受賞した。
YouTubeを面白がってやりたい社員がいたことが何より大きい。こういう社員がいるかどうかは成功の鍵だろう。今後はBtoB企業の活用も増えそうだ。
YouTubeの分析は社会的価値も出てくる!
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