2025年、人類 vs SNSの戦い

あけましておめでとうございます。今年もたくさんの記事をお届けしてまいります。年頭の記事として、2025年のメディアの世界で起こることが何かを書こうと思います。1回で書ききれないので数回に分けます。最初は、SNSについて。
境 治 2025.01.06
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SNSをおぞましい場にしてしまったのは、一人の男

2024年はSNSがまるで台風のようにメディアの世界を荒らしてしまった。詐欺広告がはびこり罵詈雑言が飛び交う恐ろしい場所になった。2025年、大げさに言うと人類はSNSとの戦いに挑むことになる。

だがよくよく思い返すと、SNSはネット上で趣味嗜好や考え方が近い人々とつながる素敵な場だった。これまでも、時に激しい誹謗中傷が人を傷つけ、痛ましい事件も起こることはあったが、2024年は度を超えて激しくなった。さらには選挙を混乱させて想定外の方向へ世論を向けてしまうことまで引き起こした。

なぜ2024年に突如、SNSが恐ろしい場所になってしまったのか。その原因は実ははっきりしている。人類vs SNSとは、人類 vs イーロン・マスクということなのだ。

SNSの荒廃は、ほとんどXで起きている。もちろんFacebookでも去年は著名人を騙る詐欺広告が公然とばらまかれたが、さすがにほとんどなくなった。いまもおかしな「おすすめ」が表示されたり、何の問題もない投稿が突如削除されたりするなどはあるが、改善がまだまだ途上だと解釈できる。徐々によくなると期待したい。

Xがそれと違うのは、イーロン・マスクの数々のルール変更により荒廃が進んでしまったことだ。Xはいわば、荒廃するようにルールが変えられてしまった。マスク氏はそれを改定する気はまったくない。それでいいとさえ思っている様子だ。いまやXは、「荒廃のSNS」と化してしまったのだ。

Xはもはや炎上を伝えるマスメディアになった

マスク氏が行ったルール変更の最たるものが「おすすめ」だと思う。これまでのXは自分がフォローした人の投稿を読むツールだった。情報を受けとる相手を選ぶのはユーザー自身だった。

「炎上」も、フォローしている人がリツイートするので自分も接することになった。だから、炎上が拡散する時はものすごく常識外れの腹立たしい投稿だった。あるいは、ものすごく感動的な投稿が拡散されることもあった。いずれにせよ、あくまで自分が選んだ相手の投稿によって炎上に触れるものだった。拡散の速度も、いま思えばだがゆっくりしていた。

ところがマスク氏が新設した「おすすめ」はUIのいちばん左側にあり、いきなり目に入る。表示されるのはX側が(おそらく何らかのアルゴリズムで)勝手に選んだ投稿だ。ユーザー側に主体性はなく、受動的な接触になる。そこに並ぶのはすでにある程度の「いいね」やリプライがついたもの。どうやら、反応が多い投稿だからとの考え方のようだ。

すでに反応が多い投稿、とくにリプライがたくさんついた投稿はそのぶん賛否が飛び交いはじめたもの。もっと言えば多くの人から批判されはじめたもの。つまりは炎上の「タネ」のような投稿だ。読むとついつい、何か言いたくなったりリポストしたくなる。その「ついつい」が炎上に加担してしまうことになる。

つまり「おすすめ」は炎上製造装置なのだ。なんだこいつ!と言いたくなるもの、それは腹が立つねえと言いたくなるものが次々に並んでいる。そしてまた、よくこんなことを赤裸々に書くなあとあきれるものも多い。家族の悪口や職場の不満、訪れたお店の批判など。共感を得たくて投稿してしまう気持ちはわからなくもないが。

こうした投稿が多くの人々の画面にどんどん表示される。いまやXは炎上のタネをどんどん世の中に広めるマスメディアと化しているのだ。趣味嗜好が近い人とつながる場ではなくなってしまった。

さらにマスク氏は有料制も導入し、月々一定額を払えば収益配分を受け取れるようにした。それが「インプレゾンビ」を生み意味不明の投稿が増えたことはすでに言われてきた通りだ。広告収入だけに頼っていたのを、ユーザーからの収入も柱にする戦略はいいのだが、やり方がえげつない。

かくてXは、悪口と告発を投稿して共感を得たい人々と、できるだけ反応を得て収入につなげたい人々の場になってしまった。そんな中に、これまで通り強い主張を炎上上等で投稿する無双な人々も変わらず活発に投稿している。うかつに投稿したら炎上に巻き込まれかねないので、私も投稿は非常に慎重になった。

もはや戦場は、国家 vs SNS

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