NHKの受信契約を増やす方法は、NHKが国民のために何をしたいかプレゼンすることだ
新聞社は、NHKの契約減少を言える立場か(笑
NHKが2023年度の決算を発表した。これについて、読売新聞が「受信契約が4年で100万件減」という嫌味な見出しで記事にしていた。さらっと読んでもらうといい。
23年度の収入減はまず、受信料の1割程度の値下げが大きいだろう。ただ記事ではこんな説明がなされたとある。
契約総数の減少傾向などの要因について、NHKの担当者は25日のブリーフィングで「一番大きいのは営業スタイルの大幅な転換」と明かした。
NHKはこれまで、外部の専門会社に契約のための営業活動を委託していたが、23年度でそれをやめた。つまり23年度は受信料を値下げした上に営業の外注も停止したのだ。そりゃあ赤字にもなるだろう。
NHKがそのことを殊更取り上げて言うのは、前田会長時代の負の遺産として見せたいからだろうと推察する。現上層部は前田会長に疎まれた人々らしいからだ。そして、前田会長最大の失敗だと私も思う。値下げもそうだが、なんで外部営業をやめちゃったのか。
その代わりにネットでの呼びかけや郵便を使うことにしたのだが、そんなやり方でNHKにお金を払うはずがない。それにしても、この記事を読んで一番面白いのが、新聞社は言えたギリなのか?ということだ。
不破雷蔵氏のYahoo!ニュースの記事では、2023年の新聞発行部数は2859万部で、前年から226万部も減ったと書かれている。記事中のグラフを見ると、ここ数年は毎年200万部以上減っていて、まるでジェットコースターだ。
NHKは4年で100万件減ったわけだが、新聞は毎年その倍減らしている。比較にならないほど、新聞のほうが状況が悪いではないか。早くデジタル化を進めるべきなのに、NHKのネット業務についての会議に出てとやかく言ってるから遅れているのではないだろうか。
「あんたたちはこんな記事書いてる場合なの?」と笑ってしまう。まあ大きなビルで高価な椅子に座って記事を書いていると、これから急降下するジェットコースターの恐ろしさがわからないのだろうけど。
受信契約減少の最大の原因は多死社会の到来
さてここで、面白いグラフを作ってみたのでお見せしたい。NHKの事業収入と地上波テレビの広告収入を強引に一緒にしたものだ。後者は電通の「日本の広告費」を毎年Excelに記入しておいたものだ。
2019年までは、民放はすでに厳しかったがNHKは収入が上がっていた。コロナでごちゃごちゃした後、両方とも下がって足並みが揃った。
オレンジが地上波テレビ広告費で暦年の数字。目盛は左側の方だ。2010年代半ばは1兆8000億円台あったのがじわじわ下がり、コロナ禍で乱高下した末、2021年度以降はぐんぐん下がっている。
一方、NHKの事業収入は青い線で右側の目盛。そのほとんどが受信料だが、意外にも2019年度まで伸びていて7300億円を超えていた。地デジ化で衛星放送契約が増えた余波が続いていたものと思われる。それが、2020年以降は減少基調になった。そこへ2023年度の値下げでガクッと下がった。値下げが大きかったことがわかるが、その前から下がっていたのだ。読売新聞の「4年100万件減少」の指摘はつまり、2019年度まで上がっていた収入が、それ以降下がったことを指しているのだ。その点は、スルドい。
しかしそうすると、なぜ減少傾向に転じたのかが見えなくなる。営業スタイルの変更も受信料値下げも2023年度のことで、その前の2019年以降急に減少に転じたのはなぜか。私は、人が大勢死ぬ世の中になったからだ、と考えている。
これは受信料の支払い率推移の表だが、「契約対象数」を見ると令和2年に5111万件だったのが、令和5年には5013万件に減っている。100万件の減少だ。4年で受信料契約が100万件減ったのは、直裁に考えると契約対象が100万件減ったからとも言える。
世帯数は一人暮らし世帯が増えて増加傾向だったが、いまは減少しているのだ。なぜならば、高齢化がさらに進んでお年寄りが亡くなっているから。特に大きな塊である団塊世代が亡くなる年齢に差し掛かった。
総務省統計局「人口推計」より筆者集計
団塊の世代は2019年に70代にさしかかった。この年に70歳以上の人は2717万人いた。2023年には同じ人たちが74歳以上になり2207万人になった。510万人減ったのだ。
ざっくりとらえると世帯数はその半分の255万程度は減ったと言える。一方、若者たちが社会人になりNHKを払うべき存在になった、それを差し引くと100万世帯の減少だった、のではないか。510万人減ったのは事実で、そのあとは推測だが、大まかにはそんなところだと思う。
さらにこれから先も悲しいことにお年寄りはどんどん亡くなる。いや亡くなる数は加速的に増えるだろう。高齢者はNHKのありがたみを享受し、受信料を素直に払っていた世帯が多いはず。NHKにとって大事な顧客がどんどん減ってしまうのだ。この流れは止めようがない。