日枝久氏が「社員は悪くありませんから〜」と泣きながら謝罪したら、フジテレビにCMが戻ってくる(今後問われる旧取締役陣の責任)

フジテレビ問題を考えていて、思い出すのが1997年の山一證券最後の社長、野澤正平氏の涙の会見だ。「社員は悪くありませんから〜」と泣きじゃくりながら言った。当時は、みっともないなあと笑ってしまったが、いま思えば立派だった。会社の廃業にあたり、社員のことを思っていい大人が涙をだらだら流す。惨めな姿をさらけ出すことで、社員を守りたい気持ちを世の中に伝えたのだ。そのおかげで転職先が決まった元社員も多かったのではないか。かっこ悪い姿をさらす、かっこいい会見だった。ちなみに野澤氏は現在87歳。現時点では、日枝久氏と同じ年齢だ。
反町氏のセクハラを断罪できないフジテレビ
フジテレビの第三者委員会報告書は、画期的な内容だった。特筆すべきはハラスメント事案について、加害した側が否定しても被害者側が具体的な証言をしていれば委員会として「認定」している点だ。裁判ではなく企業が依頼した調査だからこそ成立する手法だと思う。
フジテレビが依頼した委員会だからこそ、フジテレビとしては本人が否定しているからと曖昧な態度はとれないはずだ。「あんたがやってないといっても委員会がやったと認定してるんだから、やったの!」と言わねばならない。
ということは、「類似案件」として出てくる反町理氏のセクハラもフジテレビとしては「やったの!」と受け止めねばならない。反町氏はBSフジ「プライムニュース」のキャスターとして、毎日政治家や識者を相手にしていたが、そんなわけにはいかなくなった。報告書が出た31日は出演を辞退、その後についてBSフジは「出演を当面見合わせ」と発表した。
4月2日の「プライムニュース」ではこの報告書を取り上げ、番組の最初に反町氏のセクハラについて書かれていることも紹介した。前の週までキャスターだった人物を、その番組が断罪しているようで面白かった。
だが本来、フジテレビとしてはBSフジに「この男はセクハラ認定されたので即刻更迭します」と伝え、BSフジはそれを世間に発表すべきではないのか。すぐさまそうしないところが、「フジテレビは何もわかってない!」と言いたくなる。
いや、そもそもフジテレビはわかってないのだ。反町氏だけでなく、旧取締役陣への対処はまったく誤っている。上場企業のやることではない。
退任したのに会社にいる旧取締役陣の謎
そもそも反町氏は3月27日付で取締役を退任していた。ところが31日の「プライムニュース」の番組情報には「フジテレビ報道局解説委員長」とクレジットされていた。もうフジテレビの人間ではなくなったのに、その肩書きはおかしくないか?番組キャスターを続けるなら「ジャーナリスト反町理」と、外の人間として表記されるべきだ。
さる情報筋から聞いたことだが、反町氏は「使用人兼務役員」だったそうだ。だから「役員」でなくなっても「使用人」つまり社員の立場は残る。フジテレビの平取締役は基本的にこの立場らしい。
「使用人兼務役員」って初めて聞いたぞ、なんだそりゃ?これは社員から取締役になっても社員としての業務を続ける必要がある者のための制度。中小企業ではよく使われるらしい。
だが上場もしている大企業たるフジ・メディア・グループでそんな制度を取っていたのがそもそも幼稚だ。だからこそ今回、経営監督と業務執行を分けたと言うのだろうが、とにかく奇妙に思える。
だがだったら、反町氏は社員なのだから解説委員長でもいいが、処分もできる。社員として厳罰に処するのが、生まれ変わったフジテレビがすべきことではないのか。「当面出演を見合わせ」で済むはずがない。処分を検討している場合でもない。懲罰を即断すべきだ。
反町氏本人も雲隠れしている場合ではない。これまで解説委員長として政治家や財界人の「説明責任」を追求してきたはずだ。ジャーナリストとして自身の「説明責任」を果たすべきなのだ。「プライムニュース」に出てきて深々と頭を下げ、辞表を提出しないのか。いや、謝罪しなくてどうするの?解説委員長として、自分のしでかしたことを解説しなさいよ。
旧取締役陣は雁首揃えて会見し、謝罪するしかない
反町氏だけではない。報告書で「ハラスメントが蔓延」していたことが明らかになった。セクハラ・パワハラをしていた反町氏が取締役に出世する会社だった。一方で会社の業績は2014年までキー局トップだったのに10年間でみるみる売り上げを下げた。対策は空回りし、何もできなかった。
しまいには社会からの信頼を100%失い、CMを撤退されてしまった。このまま続くとテレビ東京より売り上げが下がり、キー局としてやっていけなくなる。本当に会社存亡の危機に陥れた、その責任は退任した旧取締役陣にあるのだ。
清水賢治社長は退任した取締役について、6月までは顧問契約だの、それ以降は経験に応じてだのと説明していたが、何を言っているのか。会社がなくなるかもしれない危機を招いたハラスメント集団である旧取締役陣がグループ会社でまた取締役だの顧問だのに就くと言うのだろうか?その尻拭いに、残った社員たちが追われるのに、子会社や系列局の役員室でのうのうと過ごすのか?それはあり得ないだろう。またセクハラをしでかすかもしれない。
旧取締役陣はせいぜい6月まで何らかの契約で残した上で、詰め腹を切らせないと筋が通らないのだ。それができないのなら、金光修氏も清水賢治氏もわかってないと言わざるを得ない。できないなら、今後のフジテレビを率いる資格はない。
そして誰よりも謝罪すべきは日枝久氏だ。日枝氏が中居正広氏の性暴力をもたらしたわけでも、反町氏のセクハラを生み出したわけでもない。だがその土壌を生み出した責任はある。人事権を振るっていた、つまりは最終責任者として振る舞ってきたし誰もがそう認識してきた人物なのだから、最後も責任を持って公の場に出てきて謝罪すべきだ。
メディア界最強の会社を率いてきた日枝氏が、プライドをほうり出して「社員は悪くありませんから〜」と泣きじゃくりながら謝罪する。それができてようやく、広告主は本当にCM再開を考えることができるのではないか。社員のため、フジテレビのために、日枝氏はみっともなく謝罪すべきなのだ。茶化して言っているのではない、本気でフジテレビを心配するからこそ、私は書いている。
第三者委員会報告書は社員たちによるクーデター第一波
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績
