各政党がネットでどう評価されているか、YouTubeから見えてくる

参議院選挙でもYouTubeが動向を握っているようです
境 治 2025.07.17
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YouTubeの分析に役立つエビリーのkamui trackerについて少し前に記事にした。

そのエビリーから、今回の参議院選挙についてYouTubeでの各政党の動画を分析したデータが公開された。非常に面白いので紹介したい。

視聴回数が多いのは意外にも既存政党?

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤枠は筆者)

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤枠は筆者)

まず各政党の公式チャンネルの数値だ。7月3日〜11日の視聴回数の合計は立憲民主党がトップで1,210万回だった。続いて参政党835万回、自民党701万回と続く。

立憲民主や自民が多いのは、推測だが広告代理店が入って広告で再生数を獲得しているのだろう。その意味では参政党が真のトップなのではないか。エンゲージメント率(いいねとコメントの合計を視聴回数で割ったもの)が9.3%と高いのが、広告を使っていない証だと思う。エンゲージメント率ではれいわ新選組が14.9%、再生の道と共産党が16%台と濃い支持者が多いことがわかる。

国民民主は視聴回数で意外にも185万回で6位、エンゲージメント率も4.9%とさほどでもない。昨年の衆議院選ではネットをうまく使って躍進したと言われたが、その勢いはもうないのだろうか。NHK党は投稿本数が19本。やる気がないのか、別の戦術をとっているのか。社民党に至っては15本だけで、「社民党をなくさないで」と訴えていたのに諦めているのか。

自民党はネガティブな反応だらけ?

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤枠は筆者)

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤枠は筆者)

「代表関連動画」のデータでは、参政党の勢いが感じられる。政党の代表のフルネームがタイトルか概要欄に入っている動画をここでは「代表関連動画」と定義していて、本数では参政党の神谷氏が1人だけ1000本越えでダントツだった。ただ、7月1日〜15日の総視聴回数では自民党石破氏が5631万回でトップ、神谷氏はその次で5074万回だった。これは意外だが、石破氏の場合は批判的に名前が使われたものが多いと推測できる。神谷氏も批判もある程度あるだろうが、台風の目としてニュートラルに取り上げたり、賛同していたりが多いのではないか。

面白いのがコメントの分析だ。

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より


各政党の一番視聴回数の高い動画についたコメントがポジティブなものか、ネガティブ化を分析した結果だ。どの政党もおおむねポジの方が多く、中でも国民民主党が95.5%ポジ。ネット活用政党の面目躍如といったところだ。共産党やチームみらいが高いのも興味深い。その次にやはり参政党がいる。

ネガティブが異様に高いのが社民党と自民党。現政権がいかに批判の的になってしまったかがよくわかる数値だ。自民党の歴史的敗北が予感できる。

関連動画から見える政治動画の勢力図

政党発ではなく、様々な発信者の選挙関連動画の視聴回数も数値化している。

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤線は筆者)

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より(赤線は筆者)


データの特徴をエビリーは次のように指摘している。
・党首討論系が3本ランクイン
・ 「ノーカット」がタイトルに2件
・ 政治系のYouTubeメディアとして人気のチャンネル「中田敦彦のYouTube大学 」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」「髙橋洋一チャンネル」の3チャンネルから5本ランクイン
・テレビメディアの「TBS NEWS DIG Powered by JNN」「日テレNEWS」の2チャンネルから3本ランクイン
・参政党に言及した動画が3本ランクイン

ここから言えることは多岐にわたる。まず、党首討論系が3本入っている。選挙について何を有権者が求めているかがわかると思う。各党各候補者が何を考えているか、その主張を知りたいということだ。

また、特定の政治チャンネルの動画の視聴回数が多いのも重要だろう。これまでの蓄積で、政治に関して影響力の強いチャンネルが出てきているのだ。今後の選挙でも要注意ではないか。

そしてテレビ局発の動画が3本ランクインしているのは、それだけ今回の選挙でオールドメディアの情報発信が活発になっている証だ。特に日本テレビの動画は「ノーカット」とあり、放送に入りきらない部分も見せるとの意味。こういう「ネットだから見せる」動画の工夫が、テレビ局がネットでも影響力を持つ手法として有効だとわかる。

次に、関連のショート動画のランキングだ。

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より

エビリー社「参院選YouTube分析レポート」より


このランキングについてエビリーが分析した特徴は以下。
・自民党、参政党の公式チャンネルで発信されたショート動画が2本ランクイン
・ インフルエンサーである「石川典行チャンネル」から2本ランクイン
・ 参政党関連の動画が3本
・ 投票を呼びかける動画が3本
・ 炎上、クルド人が強制送還、悪意の切り抜き等煽り系文言が入った動画が3本

ショート動画は玉石混交といったところか。政党の公式チャンネルもあればインフルエンサーの動画もある。クルド人問題の動画が3本というのもちょっと怖い。

選挙への影響力が増すYouTubeに、オールドメディアは対抗できるか

こうして見ていくと、YouTubeがいかに選挙動向を左右しているかが感じられる。最近になって参政党とその主張に注目が集まっているが、YouTubeをウォッチしていればもっと早く感知できたかもしれない。それに対し、オールドメディア側はどう対抗すればいいのか。私は、2つあると思う。

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