Netflixが日本上陸した10年前、会員数1000万はすでに宣言されていた

9月に上陸10周年を迎えるNetflixを振り返ります
境 治 2025.08.22
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サービス開始2週間前に特別に届いた「一足早くサービスを楽しめる鍵」

サービス開始2週間前に特別に届いた「一足早くサービスを楽しめる鍵」

Netflixは2015年9月に日本でサービスを開始した。もうすぐ10周年というわけだ。それを記念するスペシャルムービーが公開され、9月5日から10日間、渋谷でイベントが開催されるそうだ。

当時いろいろと取材してきたことを振り返ると感慨深いものがある。そして今さら気付いたのだが、昨年彼らが達成した会員世帯数1000万はすでに宣言されていたのだった。

2015年、黒船Netflix上陸へ

私はNetflix日本上陸が発表される直前にそれを聞きつけ、2015年2月にAdvertimes上でこの記事を書いた。

「大変だ、大変だ!Netflixがいよいよ日本にやって来る!」と、いささか躁状態な書き出しなのは、待望していたからだ。当時すでにNetflixが米国コンテンツ業界を席巻し始め、2013年にはオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カーズ」を製作していた。日本にも早く来い、と思っていたのでハイになったのだ。

やがてNetflixの日本オフィスの人々とも接触でき、レコメンドシステムだのなんだの、彼らの優位性を吹き込まれた。

6月にはフジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」でNetflix日本代表、グレッグ・ピーターズ氏にインタビューしている。

ピーターズ氏は実は奥様が日本人。日本で過ごした経験も数年あり、日本語は堪能だ。収録前の雑談も日本語で応じてくれた。

ただ番組側の判断として、間違いないように通訳を介してのインタビューになった。この時のやりとりをもとに、MediaBorderでは記事にした。ただ、昨年消失した旧サービス上なのでネットには残っていない。旧サービスから救い出したテキストから一部を紹介する。

境:ネット出自の企業はコンテンツを作らなかったりユーザーが作ったものを利用するところが多いですが、Netflixは自分たちで作っているのが面白い。それはどういった考え方、理念なのでしょう。
グレッグ:我々はもちろん技術の会社です。でも同時にコンテンツの会社でもあると自負しています。この二つの要素を組合せて利用者に提供するのです。つまり技術の会社がコンテンツに手を伸ばす、あるいはコンテンツの会社が技術に手を伸ばす、ということです。双方から歩み寄りがあり、両方とも重要だと思います。
境:『ハウス・オブ・カーズ』の制作ではデータを分析してスタッフやキャスティングを決めたと聞いています。意地悪な質問ですが、何もかもデータで決めるのは、ネットフリックス自身に何かを作りたい意志があまりないんじゃないかと言う人もいます。
グレッグ:50:50だと思っています。コンテンツがしっかりしていることは大事で、だからこそ人びとは見たいと思ってくれるのです。クリエイティブな要素とテクノロジーの両方が大事で必要なのです。
2015年6月20日放送フジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」より

ネット上でコンテンツを提供するサービスは他にもたくさんあるが、私の印象ではコンテンツが本当に好きな人は少ない。だがNetflixの場合、ピーターズ氏に限らず「コンテンツ愛」を感じる人が多い。「50:50」というのが彼らの大きな特徴なのだと感じた。

このインタビューでは今後のサービス内容についていろいろ質問したのだが、曖昧な答えが多く肩透かしを喰らった感があった。中でも料金体系をいちばん聞きたかったのに、これもまだ決まってないとのことだった。これは隠していたのではなく、本当に決まっていなかったのだ。

ピーターズ氏は「金額が決まったら最初にあなたにお伝えします」と言ってくれた。この約束は本当に守ってくれて、8月20日に電話で教えてくれた。その場で言っただけと思っていたので感激したものだ。

リード・ヘイスティングス氏は、日本の目標は「1/3」だと言った

Netflixの日本サービス開始は9月2日と発表されていた。前日にはメディアや業界関係者を集めたイベントが開催され、華やかな壇上でピーターズ氏と当時のCEOリード・ヘイスティングス氏が本国のエンジニアに電話をかけ、もうスタートしてしまおうとなった。予定より数時間早く、9月1日21時ごろに日本でのサービスが開始された。

9月1日、前夜祭イベントが盛大に開催された

9月1日、前夜祭イベントが盛大に開催された

翌日、午前10時。私は当時のCEOリード・ヘイスティングス氏にインタビューした。私だけではなく、新聞社など様々なメディアに個別に時間を確保してくれていたのだ。単独ではないとはいえ、私を名だたる全国紙と同等に扱ってくれたのは光栄だった。そこでヘイスティングス氏は重要な数字を示してくれた。

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