NetflixはWB買収で何を吸収するか〜面白そうな映画はおいしそうな匂いがする話
おいしそうな匂いがする映画、というものがある
ゴールデングローブ賞が発表された。「ワン・バトル・アフター・アナザー」が映画部門で作品賞、監督賞、脚本賞を総なめ!助演女優賞までかっさらった。この映画は前に紹介し、絶賛している。自分が推した作品が受賞するのは嬉しいものだ。アカデミー賞もこの流れに乗って取るんじゃないか。
ちなみにテレビ部門では「ザ・スタジオ」が作品賞と主演男優賞、「プルリブス」が主演女優賞を獲得していて、さらに嬉しい!二つともAppleTVにあるので視聴をお勧めしたい!
「プルリブス」については今週のPodcastの前半で「不適切にもほどがある」と似ていると紹介している。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」は予告編が映画館で上映され始めてからずっと楽しみにしていた。どんな映画かさっぱりわからなかったが、とてつもなく面白そうだった。
映画が面白そうというのは映画の内容がわかることではない。また名作だと確信することでもない。ぷんぷん臭うのだ。なんだかいい匂いがする。おいしそうな、旨みがあふれそうな、血がたぎりそうな、びっくりしそうな、あまずっぱそうな、おいしそうな匂いが様々にする。
それは予告編から漂う。あるいは事前情報で監督や主演などの名前から伝わる。企画の片鱗から感じる。時にやばそうな、ただものではなさそうな、なんだそりゃ?というような、ものだ。だから公開を待ち侘び、公開されたらすぐにでも映画館に駆けつけてしまう、そんな匂いを放つ映画は十中八九面白い。
そういう匂いがしなくても十分面白い映画もたくさんある。この監督なら、この主演なら、このシリーズならそりゃあ面白いんだろうと想像でき、映画館で見たら想像通り面白い。そんな映画は、それはそれでいい。
だが、いったいどんな映画なんだ?というもののほうがワクワクするし、見て面白かった時は期待を超えている。そんな映画に出会いたくて映画館に毎週のように通っている。
おいしそうな匂いのする映画がいつも楽しみで、そんな匂いを嗅ごうと予告編を見たり情報を探ったりする日々だ。
Netflixの映画は品質が高いが、おいしそうなにおいがしない
ワーナー・ブラザースの2025年の映画はおいしそうな匂いをどれもこれもぷんぷん放っていた。「罪人たち」「スーパーマン」「ワン・バトル・アフター・アナザー」そして「WEAPONS/ウェポンズ」。しかも、「スーパーマン」以外はまったくのオリジナル作品、フランチャイズでもないのに面白そうで、しかも世界で爆発的にヒットした(日本以外では)。いまのWBは企画力が高いのか、企画の目利きがいるのか、わからないが斬新な企画をメガヒットさせる力がWBにはあるのだと思う。監督の能力を最大限引き出して企画の魅力を倍化させるキャスティングができたり、観客をしっかり呼び込む配給力があるのだろう。
別の見方をすると、WBは映画として華がある作品を作り世に送り出せる。だから自然といい匂いを映画好きの鼻にとどけて映画館に引っ張って来れるのではないか。
そうなのだ、映画館で見たいと思う映画には「華」がある。わざわざ街に出かけて行って映画館という”見せもの小屋”に呼び寄せる華、いかがわしさやおどろおどろしさが2025年のWB作品群にはあった。それは劇場公開映画には絶対に必要な要素だ。
そのWBを手に入れようとしているNetflixはどうだろう。2025年のNetflix映画ももちろん、良作が並んでいた。「エレクトリック・ステイト」「木曜殺人クラブ」「ハウス・オブ・ダイナマイト」「バック・イン・アクション」「フランケンシュタイン」「ナイブズアウト・ウェイクアップデッドマン」「トレイン・ドリームズ」数え上げるとキリがないほどたくさんある。豊作だった。
おや?だが・・・どうしてだろう。それぞれを語ろうとしても、語る熱量が湧いてこない。語りたくならない。「ワン・バトル・アフター・アナザー」についてなら、誰も聞いてなくても私は一晩中喋り続けるだろうに。
どれもこれも、上質な作品ばかりだった。「トレイン・ドリームズ」なんて文学だ!素晴らしい!そして作家性がどれも高い!それなのに、映画好きを興奮させる何かが見当たらないのだ。匂い、などという曖昧なことしか言えない。だが曖昧なのにそこに映画の魅力の本質がある気がしている。上に挙げたNetflix映画たちはなんというか、ワクワクしない。映画館に真っ先に駆けつけそうにない。実際、劇場公開されたNetflixオリジナル映画を私は映画館で見たことがない。いずれ配信で見られることがわかっているから、ではない。いい匂いがしないからだ。
NetflixがWBから吸収して欲しい、おいしそうな作品作り
NetflixがWBを買収するのは、彼らの配信サービスを進化させるためなのだろうし、そのためにはWBが持つ「ハリーポッター」やDCコミックスなどのIPが役立つ。大勢の人がそう評している。
ただ、だから劇場映画事業を畳むわけではない、とも言っておきたい。というのは、NetflixほどではないにしてもWBの劇場映画事業に配信サービスHBO MAXを合わせた売上高はとんでもない金額であり、買収すると1.5倍規模の劇場+配信のエンタメ企業になる。劇場映画を畳むと、大損こくのだ。だから劇場映画産業の未来がないと判断するまでは続けるはずだ。
そしてそこからNetflixが得られるものは売り上げやIPだけではない、と言っておきたい。それが、配信にはあまり必要ないけれども劇場には絶対に必要な「匂い」であり、作品が放つ「華」だ。このマニュアル化しづらい要素こそ、Netflixに決定的にかけているものであり、さらにはもし手に入れたらNetflixは史上最高のエンタメ企業になる可能性がある、と私は思う。
ではさっきから「匂い」とか「華」などと言っている要素は何がもたらすのだろう。さらに抽象的なことになってしまうが送り出す側の「本能」とか「欲」とか「野心」とか、そういったものだと思う。「匂い」や「華」を作品が持ち、劇場という場所に身体的に人を集めるには、そんな人間臭い何かが必要なのだ。長く生きてきて、長く映画を見てきて、またその人生の一部で映画を作る人々に接してきて、そんなことを感じる。芸術ではなく娯楽を形にする人たちにはそういう「本能」がある。
Netflixがデータ分析という理性の塊のような物とはまったく別に「本能」を手にしたら、最強だと私は思う。
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