YouTubeが政治家を生む時代になったことをYouTubeに聞いた

東京都知事選の時に感じた疑問をYouTubeの担当者に聞いた記事です。
境 治 2024.10.07
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YouTube News & Civics Partnerships DirectorのBrandon Feldman氏

YouTube News & Civics Partnerships DirectorのBrandon Feldman氏

東京都知事選にYouTubeがあれほど影響を持てたのは?

7月の都知事選の投票結果には本当に驚いた。石丸伸二氏が165万票で2位になり、5位の安野貴博氏も15万票獲得の大健闘。再選された小池百合子氏の対抗馬として大手メディアが扱った蓮舫氏は128万票で3位だった。石丸氏と安野氏を躍進させたのはテレビではなくYouTubeだ。

YouTubeはもはや政治を動かすプラットフォームになり、テレビが設定したアジェンダなんて若い世代には影響しないとわかった。ここで言う若いとは10代20代だけではなく、40代まで含んでいる。テレビは中高年にしか影響力を持っていない。

ただ一方でネットは今、誤偽情報で溢れかえり、詐欺が横行し誹謗中傷が日常化、罵り合いだらけで荒廃の一歩手前の状態だ。映画「マッドマックス」のような荒野を覚悟して歩かねばならない。

そんなインターネットで、政治家が育つという前向きな動きが出てきているのはどういうことだろう。何かデータとかないですか、と漠然とグーグルのYouTube担当の方に問いかけたら1か月ほどして、我々の考えを聞いてもらう時間を作るのでどうかと返事が来た。米国からこの分野の責任者が来る折に時間を作ってくれるというのだ。

それは願ってもないと、9月後半のある日、上の画像の人物にお会いすることができた。YouTube News & Civics Partnerships DirectorのBrandon Feldman氏だ。以降、親しみを込めてブランドンと表記する。

少し驚いたのが、肩書きにCivicsとあることだ。市民、公民という意味。News Partnershipsだけなら報道機関との関係づくりだが、Civicsが加わるのは、報道機関とは別にYouTubeを通じて社会的発言をする人々とのパートナーシップも含めた活動を仕事にしているようだ。独特の肩書きだと思った。

「Building Trust」を仕事にするブランドンに話を聞いた

まずブランドンからYouTubeとしてのNews & Civicsについての考え方を説明してもらった。こう言っては失礼だが、意外にしっかりした理念を持っていた。

YouTubeは「オープンであることにコミットメント」しているとブランドンは言う。誰でもYouTube上で発信することができる、それがニュースなどの情報源として大事だとの考え方だ。

「特に選挙の時期は大変重要。様々な政治的な考え方やものの見方を共有できます。」と言っていた。都知事選と結びつけて考えると、だから石丸氏も安野氏も発信できたのだと言える。

さらに、信頼構築(Building Trust)の努力をしている、と言う。「コミュニティガイドラインで、 youtube上で何が許可されて何が許可されてないのかということを規定をしている」ことで信頼構築すると言っていた。

例外としてEDSAの分野がある。教育(Education)、ドキュメンタリー(Documentary)、科学(Science)、芸術(Art)で、これらについては物議を醸したりセンシティブな内容が含まれていても例外としているそうだ。

コミュニティガイドラインを補完するのがレコメンデーションだ。質の高いコンテンツを優先することが信頼構築に寄与しているという。ここはYouTubeらしいと感じた。YouTubeで動画を見ていると、関連動画がおすすめに出てくるので、また見てしまうことが多い。ガイドラインを守っていない動画はおすすめされなくなる。自分たちの特徴を活かして信頼を構築しているわけだ。

私は、YouTubeがこれほどはっきり「Building Trust」と言うのが興味深かった。とは言え、ここまで聞いたことだけで信頼が構築できるのか?これについては後で質問したので後述する。

他のアジアでも独立系チャンネルが選挙に影響を及ぼしている 

次に見せてくれたのが、アジアの国々でYouTubeを使った選挙情報を発信していた独立系のチャンネルだ。まずは韓国。

「シュカワールド」というニュース配信チャンネルで、政治情報の啓蒙を目的とし300万人以上が登録している。その中の今年4月の国民議会選挙についての動画だ。どういう政党が人気があるのか、その政党はどういう政策を提唱しているのか、また投票することの意義重要性を啓蒙しており、77万回再生されている。日本だとテレビ局がやることをYouTubeチャンネルでやっている。

次はインドネシアの例。

元々は旧来型のメディアにいたナジワ・シハブという記者が個人で発信を始めたチャンネル。大統領選挙についてのディベートをライブ配信した動画だ。なんと1000万人が登録し、この動画は800万回以上再生されている。

続いて日本の都知事選についての事例として、RaHacqでの候補者4人の討論と、NewsPicksが石丸氏とともに安野氏を紹介した動画も見せてくれた。

韓国やインドネシアでも日本同様、既存メディアとは別に活動する独立系チャンネルが出てきて、実際に選挙に影響を及ぼしているのは素晴らしいと思った。しかも両者とも登録者数も再生数も莫大だ。インドネシアは人口が日本の倍以上とは言え、登録者数が1000万人とはもはやマスメディアだ。

今年前半にアジアで増大している若い世代の影響力

ブランドンの説明はわかりやすく、まさに私が聞きたいことだったが、それだけに逆に聞きたいことが増えた。まず信頼構築を重視することは伝わったが、ガイドラインを示すだけでそれが果たせるのだろうか?ブランドンはこう説明してくれた。

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