ウェブメディアOTEMOTO、20ヶ月で100万PV達成の戦術を小林明子さんにこっそり聞いた
TEMOTOは2022年に誕生した、株式会社ハリズリーが運営するウェブメディアだ。同社が自身で情報発信するためのオウンドメディアの一種。そのOTEMOTOが、今年4月に月間100万PVを達成したという。
編集長の小林明子さんは、朝日新聞出版からBuzzFeed Japanを経て、ハリズリー社に転職しOTEMOTOを立ち上げた。
実は私は、小林さんとは10年前から子育て関係の記事を通じて交流がある。自分でも忘れているが、ひところ私は子育てと社会について取材し情報発信していたのだ。私のブログに小林さんに登場してもらったこともある。
なので「さん付け」で書いているのだが、その小林明子さんが、OTEMOTO創刊からわずか20ヶ月で100万PVを達成したのはすごい!大手メディアが立ち上げたサイトでも、いま100万PVは簡単には達成できない。そこで久しぶりにお会いしてじっくり話をお聞きし、100万PV達成の鍵を探った。
小林明子さん
ものづくり企業のホールディング会社、ハリズリー
境: まず、ハリズリーについて教えてもらえますか?
小林明子さん: ハリズリーは、様々なものづくりを行う企業の集まりです。中心となるのは土屋鞄製造所で、1965年に創業した革製品のブランドです。現在の社長は2代目で、事業拡大にあたって、同じようなものづくりの理念を持つ企業やブランドを買収する形で成長してきました。
例えば、ドリームフィールズという会社はBIZOUXというブランドなどでジュエリーを製造販売しています。TSUCHI-YAは、江戸切子などのガラス製品のブランドです。これらの企業やブランドをまとめたホールディングス企業が、ハリズリーという会社なんです。
境: ものづくりの理念を共有する老舗企業が集まっているということでしょうか?
小林明子さん: 必ずしも老舗企業だけではありません。お客様のために一から手作りする、あるいはサステナブルな素材を使用するなど、丁寧なものづくりをきちんと行っている点が共通しています。
また、グループ内では人事交流もあり、ECサイトの仕組みを共有したりと、様々な面でシナジーを生み出しています。
オウンドメディアOTEMOTOはなぜ生まれたか
境: ハリズリーはなぜ、オウンドメディアを立ち上げたいと考えたのでしょうか?
小林明子さん: 実は、土屋社長は紙媒体が主流だった時代から、メディアを作りたいという思いを持っていました。父親が作ったランドセルを多くの人に使ってもらうためにDM戦略を展開し、近隣の人たちに一軒一軒手紙をポスティングする地道な活動をしていたそうです。
20年以上前からメディア作りの思いがあり、私にオウンドメディアについて相談をいただきました。
境: OTEMOTOの目標や方向性は?読者を増やしてブランディングするのか、ECに誘導して販売に貢献するのか?
小林明子さん: まず、メディアとしての力を大きくしないと何もできない、一方で事業に貢献する必要もあります。どちらを優先するかについて、立ち上げ時に議論を重ねました。結果として、まずはメディアとしての力をつけることを優先しました。OTEMOTOのメディアパワーを高めて間接的にグループの理念や価値観を発信できると考えたんです。
独立したメディアとしての戦略
境: 具体的にはどのような戦略を取られたのでしょうか?
小林明子さん: まず、OTEMOTOを独立したメディアとして成長させるため、幅広い読者に届く情報を発信することにしました。あえて事業との関係性はあまり表に出さない方針です。
グループ企業の記事を掲載する際は、「スポンサード」と明記しています。バナー広告枠を設けて、土屋鞄の広告を貼ったりしています。
境: あらためてサイトを拝見して、面白いと思いました。あくまで独立したサイトで、事業の広告と明確に区別していますね。
小林明子さん:これは、スマートニュースやYahoo!などの外部プラットフォームにも配信しているため、広告と編集記事の区別を明確にする必要があったからでもあります。
境: 外部プラットフォームへの配信も積極的に行っているのですね。どのくらいの規模で展開されているのでしょうか?
小林明子さん: 現在、約10のプラットフォームに配信しています。基本的な大手プラットフォームには全て配信していて、LINEニュースなども含まれます。
境: 記事は「つくる」「つなげる」「はぐくむ」の3カテゴリーに分かれていますね。「つくる」はハリズリーの業態とすぐ結びつくのですが、「つなげる」はどういう意図でしょう。
小林明子さん: サイトのいちばん下に3つのカテゴリーの説明があるのですが、「つなげる」はサステナビリティやダイバーシティ、事業承継も含んでいて、今はこれらもものづくりの大事な課題です。原材料調達での人権尊重や環境保全も重視される中、こうした課題も解決していきたいという企業姿勢を込めています。
100万PV達成のエンジンになった「はぐくむ」
境: 20ヶ月で100万PVを達成されたそうですが、その道のりはどのようなものだったのでしょうか?
小林明子さん: 正直に言うと、決して平坦な道のりではありませんでした。グラフで表すなら、右肩上がりの直線ではなく、大きな凸凹のある曲線になると思います。
私たちは月に15本程度の記事を出していますが、1本の記事の反響によって大きく数字が変動します。ある月はすごく読まれ、次の月はそうでもない、というような具合です。ただ、徐々に1本あたりの読まれ方が大きくなっていったり、平均的な数字が底上げされていったりしました。
境: Yahoo!など外部メディアに配信していると食いつきのいい記事が瞬間風速的に読まれても蓄積になりにくい気がしますが。
小林明子さん: おっしゃる通りで、その関連記事から本体に来てくださるとか、この記事はスマニューで読んだけど別の記事を探して来てくれる、といったことが連動して増えていき、それが積み重なって認知に繋がったのだと思います。
境: 具体的にどのような記事が読者の反響を得たのでしょうか?