Interopで日本テレビ・アドリーチマックスのさらにディープな話を聞いた
6月12日から14日まで幕張で開催されたInterop。今年はその中に「Media Summit」という特別企画が新たにできて、3日間で20コマを超えるセッションが展開された。
私も一つ企画を立てて登壇したのだが、それはまた別の機会に書こうと思う。ここで紹介したいのは、その中の、初日12日に行われたこの企画だ。
「テレビビジネス最前線」のシリーズタイトルで、電通の奥律哉氏の単独講演、日本テレビアドリーチマックス部の松本部長と武井氏による講演、そして3人が揃うセッションの3部構成になっている。1枠40分のフレームを使って、間に休憩も挟む形で共通するテーマのシリーズセッションが構成されているのだ。仕掛け人は電通・奥氏で、アドリーチマックスという新しい試みのために舞台を用意したセッションのようだ。
ここで3セッション120分の内容を紹介するのは無理なので、その中でも私が特筆すべきと注目した部分のみを紹介したい。
インプレッション取引は%ではなく人数で売る
アドリーチマックス(以下AdRM)にはさまざまな側面があるが、私が注目したいのはインプレッション取引だ。これまでのテレビCMは視聴率を指標にしていた。これを変えるということだ。(ただしあくまで、それを希望する広告主に対してのオプション)
最近は企業の広告担当者にも若い世代が増えてきた。その中には、デジタルマーケティングを担当したのちに、テレビCMを扱うようになった人もいる。そんな人からすると、「視聴率」はいまひとつ理解できない指標だ。
デジタルでは基本的な指標がインプレッションつまり何回表示されたか。その上で、どれだけクリックされたかが「%」で示される。アクションを起こしたかどうかの指標が「%」なのだ。
ところが「視聴率」はどれだけ見られたかの指標なのに「%」で示される。デジタルマーケティングを経験してきた人からすると混乱するだろう。そしてテレビCMとネット広告が繋がらない。
テレビCMもインプレッションにすることは、そんなデジタル経験値の高い広告主担当者にとっては理解しやすいし、ネット広告と繋げられる効用がある。テレビがネットに合わせてあげるのだ。
ではどうすればインプレッションが導き出せるのか。視聴率を人口で掛ければいい。極めて単純な話だ。これについて、Interopの講演の中でこのようなチャートが示された。
日本テレビアドリーチマックス部による講演で撮影した画像を、許諾を得て掲載
「テレビ広告のインプレッション算出式」として、全国も関東も「視聴率(個人)×人口マスタ」となっている。「視聴率×人口=インプレッション」と捉えればいい。
ここでは人口マスタは「ビデオリサーチ社作成」となっているが、公的機関によるデータがあるので、それを使えば人口は入手可能だ。F1の人口がわかれば、個人視聴率に掛けることで「F1のインプレッション」も算出できる。
そして人口を掛けるのだから、視聴率から人数を算出するのと同じことだ。インプレッション取引とは、つまりCMが届いた人数を基準に取引をするわけだ。
さてここからは私の推測だが、インプレッション取引には大きな副産物があるだろう。テレビCMの価値が業界で再評価される可能性があると思うのだ。
ネット広告と指標を揃えると、テレビCMのリーチの莫大さにあらためて気づくのではないか。いま、例えばドラマの個人全体視聴率が4%台、F1の視聴率は1%台なんてことはザラだ。それをもってテレビが見られなくなった、若者が離れたと言われている。だがインプレッション換算してネット広告と比べた時、「ええ!テレビCMのリーチってこんなに?」と受け止める人は多いはずだ。
以前と比べると確かにテレビは見られなくなったし若者が離れた。それでも、テレビCMのリーチ力は莫大だ。それが指標を揃えることで見えてくる。