マスメディアは、リベラルからニュートラルへシフトせよ
どこかピントがずれてた気がする「報道特集」
11月2日のTBS「報道特集」に、私はコメント出演した。テレビが選挙報道をしないことを、思い切り批判してほしいと依頼されたのだ。
私は、上の動画の4:55あたりと11:15あたりの2回登場するのでぜひ見てほしい。ただ、ライティングがひどくて、強いライトを一灯あててコントラストが強く出ている。こちとら顔中たるみまくっているので、それが強調されて情けなかった。もっとカッコよく撮ってよ。
それは置いといても、このコーナーではテレビが選挙報道を萎縮させたプロセスを初めて伝えたと思う。メディアの使命は権力監視とか言ってるくせに、自民党から要望書を突きつけられたらしゅんとしぼんだのだ。ただ圧力に屈したというより、「うちの党は15秒短いじゃないか!」といちゃもんつけられるのがめんどくさくなった。「量的公平ではなく質的公平でやってます!」と猛烈に反論すべきだった。
それも置いとくと、このコーナーでは私も言いたいことを言わせてもらったものの、番組の主張とどこかずれていた気がする。それは何かというと、「報道特集」がこのテーマを取り上げたのは、今回の総選挙で投票率が下がって戦後3番目の低さだったのは若者の投票率が下がったと思ってるっぽいのだ。それは間違いだ。
10月31日の記事でも見せたが今回の比例代表の政党別投票数を見てほしい。
前回と今回の衆議院選挙の得票数の差分に注目すると、維新の票は保守と参政に流れ、共産の票はれいわに流れたことがわかる。そして自民公明を合わせて648万票も下がっている。一方合計が291万票下がっている。この数字が「前回投票したが今回投票しなかった」数で、投票率を戦後3番目にまで下げた要因だ。
自公合わせて648万票下がったのが、合計の差分と国民民主の増加分に流れたと見るとほぼ帳尻が合う。国民民主に流れたのは20代30代の若者と見ることができる。つまり291万票投票が減ったのは、自公にお灸を据えてやろうとあえて投票をやめた高年齢層と考えるのが妥当だ。
もうじき、世代別の投票率が出るはずなので答え合わせをしたいが、直近の投票率を見ると、すでに若者層が上昇し高齢層が下降気味だったことがわかる。
今回の選挙後に、10代の投票率が前回と変わらなかった、それは全体平均より10%も低い、という趣旨の記事を見たが、悪意としか思えない。10代の投票率が下がらなかったのなら、今回の投票率が前回より下がったのは10代のせいではないということだ。上のグラフで50代60代のグラフがかくんと下向きになっていることこそが重要だ。
若者の投票率を憂いている感じの「報道特集」はこれらのデータを見ることもなく、イメージだけでそんなムードを醸し出し、大学生に選挙について聞いている。どこかずれていると言わざるを得ない。もっとデータを見たり、世の中の空気をかいだりしろよ。
米国大統領選挙でもピントがずれていたマスメディア
そんなこと言ってるうちに米国大統領選挙の決着があっさりついてトランプ氏が勝利した。話が違うじゃないか。今回の大統領選挙は大接戦だと言ってたじゃないか。だったら過去の大接戦のように、結果が出るまでもっと時間がかかるはずだ。つまり、大接戦ではなくトランプ優位だったからトランプが圧勝した。全然違った。
違ったのは日本のマスメディアだ。そして日本のマスメディアは米国のマスメディアが報じていた大統領選挙の情報を鵜呑みにしてそのまま伝えていた。米国のマスメディアが状況を読み違えていたので、日本のマスメディアも読み違えてしまった。
いや、米国のマスメディアだけのせいにはできない。日本のテレビ局は投票日が近づくと、それぞれのキャスターを米国に派遣してリポートさせた。その誰も彼もが「どちらになるかわかりません。大接戦になります。」と報じた。どこを見てたんだよ!
キャスターが派遣されただけでなく、各局とも優秀な記者を特派員として常駐させていたはずだ。そいつらは何を見ていたんだ?何も見ていなかったと批判されても仕方ないだろう。特派員連中も結局は、米国のマスメディアの情報を鵜呑みにしていたのだから。
米国のマスメディアが見誤っていたのは、2016年の時とさして変わらない。地べたの情報収集をしていなかったのだ。あの時も、そして今回も、民主党シンパの感覚を捨てられず、トランプなんて野卑なおっさんが勝つはずがない。民主党の方が正しいのだから民主党が勝つに決まっている。だって調査しても五分五分だけどややハリスが優位な結果が出ているしね。そんな見方しかできてなかった。
フタを開けると、白人だけでなく黒人もヒスパニックも経済のことが最優先で、女性たちもハリス支持者だらけではなかった。そういう国民の気分を把握していれば米国のマスメディアは誤らなかった。でも誤った。
マスメディアにいる人々は高学歴で高収入だ。その高い場所から見ても、低いところで暮らす多くの人々の心情は見えなかったのだ。
民主党の言う民主主義とは、さらに彼らの意識高い主張の数々は、金持ちが余裕かまして言ってることだったのだ。実は米国は人種差別を始め社会課題を解決できてないどころか、民主党支持者の金持ち連中も本当に差別しない心性を持っているのか大いに怪しいのだ。「正しい」主張を持つ虚飾をまとっているだけなのかもしれない。