「テレビデバイス」を重視するライフネット生命の”テレビ愛”を聞く

CTVも含めて「テレビデバイス」と捉えてCMを展開しているライフネット生命のマーケティング部長、肥田康宏氏へのインタビューです。先進的な考え方で、インプレッションの指標化にも期待をされています。
境 治 2024.03.29
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ライフネット生命の社名を今や知らない人はいないだろう。博多華丸・大吉がCMに登場し、漫才で保険を語る。スマホで見積もりを出してすぐ契約できる、ネット時代に合ったスタイルの生命保険会社だ。

2015年のInter BEEに登壇した肥田氏。なんとCM1本ずつ効果測定していた

2015年のInter BEEに登壇した肥田氏。なんとCM1本ずつ効果測定していた

マーケティング部長の肥田康宏氏は、実は2015年のInter BEEで私が企画したセッションに登壇いただき、以来Facebookでやりとりしていた。最近、いくつかの記事で取材に答えて、テレビ放送もCTVも同じテレビで視聴する広告媒体として「テレビデバイス」と捉えていると語っている。

Inter BEEでお話しした時は広告代理店から移籍したばかりで、テレビCMの価値を自分はわかっているが、社内にどう効果を理解してもらえばいいかと悩んでいらした。だが取材記事ではその悩みを克服したように、「テレビデバイス」の価値を胸を張って語っている。久しぶりにお会いし、テレビについての考え方や、日本テレビのARMプラットフォームの印象などを伺おうと訪問した。以下は、できる限り肥田氏の言葉を再現して書いていく。

ライフネット生命株式会社  営業本部マーケティング部長 肥田康宏氏

テレビとネットを使い 第一KGIは新規の契約数

まずライフネット生命にとっての広告の役割について聞いた。

「当社にとって広告は効果測定できるかが肝心です。9年前のInter BEEに登壇した当時は、自分たちで1本1本のCMによるサイト来訪や見積り利用のスパイクを見て社内に効果の説明をしていました。今はツールを使って効率化ができていますが、テレビとウェブが当社のビジネスに与える影響の大きさは今も変わりません。 」

いまは広告と生活者の関係が難しくなっているとも話す。

「当社の広告は、生活者の皆さんの時間の中にお邪魔しますという姿勢でありたい。テレビCMはトイレタイムと言われましたが、米国のスーパーボウルのCMはエンターテイメントになった。あそこまでは行けないですが、 せっかく生活者の皆さんの時間をいただくのであれば、楽しんでいただけるコンテンツでありたいと考えています。」

確かに華丸大吉のCMは見ていて楽しい。一方でウェブ広告はいま、モラルが問われている。

「生活者として感じる”なんでバツボタン押してからじゃないと次読めないんだろう”とか、”スマホの画面の8割が広告で記事の文字量が2行ぐらいしかない”というところは、今悩ましいですね。ホワイトリストでここにしか出さないと言えればいいのですが、まだそこに至ることができていません。もちろん、当社にはコミュニケーション媒体規定もしっかりありますし、出したくないところには出していませんが、不十分だと思っています。」

肥田氏には常に、普通の生活者としてのマインドを大切にする姿勢が感じられる。

CTVでの効果の可視化は難しいが、必ず伸びるはずなので取り組んでいる

今回の取材の本題のひとつ、「テレビデバイス」というカテゴライズについて聞いてみた。放送とCTVを一緒に捉える考え方は先進的だ。ただ他の記事によると、CTVはまだ数が少なく検証中とのことだった。

「地上波のテレビとCTVを比べられるツールとして、電通さんの『レスポンスコネクター・ダッシュボードPro』でいろいろと検証をさせていただいています。 難しいと思うのは、地上波テレビではCMを放送した瞬間に、多ければ千万単位のリーチがある。一方で、 CTVのインプレッションはその瞬間で切り取って見てしまうと、けた違いに小さい。この違いを1つのツールの中で比べる難しさ。数十インプレッションをどう評価するか。1年弱やって悩んでいるところです。 」

TVerで何百万回もの再生数になったヒットドラマの話が聞こえてくるが、瞬間的に放送と比べるとずいぶん小さいわけだ。

「手応えとしてはまだ感じにくいと思っています。ただ、 メディアの接触時間の推移を見ていくと、絶対無視できない媒体なのでやめていいとは思いません。また、ターゲティング精度を上げるほど配信単価も上がりますが、スポットの絵柄の概念と同じで、1番いいところを探すのがすごく難しいと思っています。CTVの方は性別も年代もエリアも選べるので、余計ぎゅっと配信対象を絞りたくなりますが、その分単価も上がる。でもセグメントを絞ったから効率が良くなるとも限らず、バランスを探しています。」

 先行的な取り組みだからこそ、悩みも尽きないようだ。

「ゆくゆくCTVが伸びていくことを見据えてテレビデバイスという捉え方をしてますが、数としてはまだまだリアルタイムでテレビを普通に見てる人が全然大きい。ただ、まだ1割弱と聞いてますが、すでに存在するCTVでしかリーチできない層にもきちんと向き合わないといけない。僕がCTVが重要であると考えるのは、スマホの小さな画面で伝えられる情報量と、テレビの大きな画面で伝えられる情報量は違うからです。無形の金融商材である生命保険は、大きな画面でなければ大事なことが伝わらないのではと考えています。 」

そうすると、スマホやタブレットのTVerやYouTubeなどは使っていないのだろうか。

「試験的に使ってはいるのですが、スマホはさらに効果検証が難しいと感じています。再生数等、動画コンテンツ特有の数字は積み上げるとすごく伸びているように見えますが、実体は何割引きかで見なきゃいけないと思っています。ただ一方で、没入感が違うという評価もある。受動的なテレビはだらだら見てるだけで、視聴の質はスマホで見る動画の方が高いと言われると、そうかもしれないと揺らいではいます。 」

確かに、スマホ動画のCMをどう解釈するか、誰も確信を持って言えないかもしれない。

「これからは接触時間は明確にCTVとスマホ動画のほうが増えていくので、効果が見えづらいからと何もしないわけにはいきません。スマホであってもクリエイティブを縦型にこだわり抜くと一定は数字動くことを、今まさに確認しているところです。 」

インプレッションに指標が統一されることには大きな期待

今回もう一つ聞きたかったのが日本テレビのARMプラットフォームについてだ。感想や期待、あるいは課題などどう感じているかを聞いた。

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