imp保証型でZ世代向けCM!そんなのあり?ということで話を聞いてみた
驚きのプレスリリースを見てさっそく取材に
ある日、なにげなく見かけたリリースを、思わず凝視した。
「imp保証型のテレビCM」という点にまず「?」が巻き起こる。テレビCMは現時点ではGRPで取引する。日本テレビが昨年11月に発表した「ARMプラットフォーム」はimp取引を含んだ新しい売り方だが24年春から実施するものだ。それが現時点で可能なのか?
さらに「Z世代に効くCM」というが、Z世代はそもそもテレビCMが効かないと言われているわけで、これも「?」が増していく。
直接話を聞いてみたいとCM in-houseにコンタクトし、同社の代表取締役・田中陽樹氏と、連携するFor Youの執行役員・筧将英氏にお会いした。そこから見えてきたのは、令和の新しい広告の姿だった。そしてまた、テレビCMの新たな価値も感じる話が聞けた。
CM in-house 代表取締役 田中陽樹氏
テレビCMをブラックボックスから解放するCM in-house
まず田中氏にCM in-houseの事業内容を聞いた。imp取引はこれまでのCMセールスを一新するような考え方だが、田中氏は意外にも電通の出身だという。
「2006年に入社してテレビの部署にいましたが、退社して2018年からGOに入りました。損保シャパンの自動車保険やファミリーマートのプライベートブランドのリニューアルを担当したあと、在籍中にCM in-houseのサービスを立ち上げて、去年の12月に法人化し独立しました。」
そのCM in-houseはどんな業態か。
「CMのメディアバイイングに特化した代理店です。そのバイイングデータをCM in-house独自のダッシュボードで提供し、どんな枠をいついくらで買い付けたのかといったこれまで煩雑だった情報を、組織でわかりやすく共有できる仕組みを無償で提供しています。」
これまで電話やメールでやりとりしPDFやExcelでバラバラに届いていた情報をクラウド上で一括管理できる
「ダッシュボードでは、放映終了したものから今放映中のもの、これから始まるものまでキャンペーンのデータがすべて表示されます。今までは担当者個人に情報が送られていたので、組織では共有されなかった。つまりノウハウが続かず、ある担当者がCMに詳しくなっても、異動するとノウハウがわからなくなっていました。それを可視化することで、過去のキャンペーンの金額やCM出稿が確認できます。情報を全部開示していくのが私たちのやり方です。」
広告代理店は情報を言わばブラックボックス化してノウハウを広告主に渡さないようにしがちだったが、真逆の考え方だ。
「今までは情報をバラバラに、見積もりはメールの本文、プランニングはエクセルで、線引きはPDFで来る。放映素材は動画データで渡してました。それを全部一つのダッシュボードに集約しています。効果検証も見られるので、このダッシュボードですべてのキャンペーンの内容も結果もわかるようになっています。」
実際、広告主はすでに様々なデータを取り寄せ、自分たちで分析するようになってきた。ブラックボックスはもう成立しないのかもしれない。情報のオープン化はこれからの潮流になりそうだ。
「GOはファンドもやっていて、スタートアップ企業と話したのが私にとって大きな転換点でした。テレビCMをやってみたいけどブラックボックスでよくわからなくて怖いと言う人が多かったんです。でも一方で、CAMPFIREさんやメルカリさんのお手伝いをさせてもらったのですが、明らかにテレビCMで成長した企業だと思います。ベンチャーにもCMを活用して伸びている企業がたくさんある。よくわからないからとCMをやらないで成長機会を逃している会社にちゃんと寄り添える仕組みを作りたいと思ってCM in-houseを作りました。」
広告主に寄り添いつつテレビ局との関係も重視
新しいテレビCMのセールスを売りにするのは先行する他社もある。違いはどこにあるのだろう。
「他社さんは放送後の効果検証をしっかりやっておられます。我々もそこは同様ですが、事前の買い付けの効率化を徹底的に重視しています。事後で5%改善するのはものすごく難しいですが、事前で10%、20%改善させるのは弊社のバイイングノウハウを活用すれば実はハードルが低い。そこにコミットしたいです。」
つまりシミュレーションが十分にできるということだろうか?
「そうです。このサービスを立ち上げた背景の1つは、広告の成果が代理店の営業が優秀かどうかにものすごく左右されることです。『担当ガチャ』と呼んでますが、担当者によって買い付けの良し悪しが変わってしまうのをなくしたい。それを、広告主が自ら知見を溜める仕組みで改善できると考えています。一部の広告主さんはものすごく勉強されていて自社で作った管理ツールで研究されていますが、どなたでも理解できるようにしたかった。」
一方で、すべて可視化することでテレビの価値の高さもわかるはずだと言う。だからテレビ局との関係も重視している。
「このサービスも発表の前に全キー局さんを回って事前にお伝えしたり、発表後には各系列全局さん向けに説明会やらせてもらったりしました。テレビCMってすごく価値があるものだと思うし、人が動くと思っています。ティーンはテレビを見ないと思われがちですが、調査をすると化粧品とかスキンケア、菓子などを買う時の決め手になった広告としてテレビがトップに上がってきます。ティーン向けサービスだからデジタルしかやらないとおっしゃる広告主に、テレビCMを有効に活用してもらえればと思ってます。」
For Youの筧将英氏は、電通で田中氏の後輩だった
For Youとのタッグでimp保証に挑戦
本題である「Z世代向けimp保証CM」について聞いた。CM in-houseとFor Youの提携企画だ。まずFor Youについて田中氏とは電通で後輩だった筧将英氏に説明してもらった。
「電通ではストラテジックプランニングの部署でコミュニケーション戦略やIMC設計を担当していました。For Youは30代前半の野田社長が学生時代に作った若いメンバーの会社で、私は2年前から参画しています。デジタルやソーシャルを主戦場にした広告代理店兼タレント事務所のような業態で『インフルエンスデザイン』と標榜しています。」