ハリウッド映画は自動車産業のようにトランプが心配する対象になったのか?

トランプ関税が映画にもかかるというニュース
この連休中にメディア・コンテンツ業界の話題をさらったニュースと言えば、トランプ大統領による「映画関税発言」だろう。ただ、どういうことか不明な点が多い。海外から輸入した映画の入場料が上がるのか?米国在住の映画ジャーナリスト、猿渡由紀氏はこんな解説記事をYahoo!に書いている。
大作よりむしろ小規模な作品のほうが税優遇策のある海外で撮影をするので、それに税金をかけるなんてたまったものではない、という話だ。Netflixにも30億ドルのコスト増になるとの専門家の試算も紹介している。なんと名優ジョン・ボイトが発案に関わっているらしい。映画界はありがた迷惑のようだ。
杉本穂高氏も、編集長を務めるBrancでこんな記事を書いている。
やはり米国映画の海外撮影(ランナウェイ・プロダクションと呼ばれるそうだ)に歯止めをかけたいのではとの読みだ。赤沢大臣はこの件も交渉に乗せるべきだとも杉本氏は言う。
コロナ禍とストライキですっかり弱ったハリウッド
私がこの件で感じたのは、ハリウッドの映画産業がトランプの心配の対象になっていることへの驚きだ。自動車や鉄鋼産業はいかにもピークを過ぎた製造業で、米国経済の中で「取り残された」存在だった。トランプが自国主義に立って守ろうとするのはよくわかる。
だが映画産業も彼の目から見ると守るべき産業と映ったということだろう。
どれくらい危機なのか。試しにChatGPTに推測させてみた。ハリウッド映画の世界での興行収入はどう推移したのか。これは公式発表の数字はなく、世界全体の興行収入とその中での米国映画の推測シェアからざっくり概算値をだしてもらった。

ChatGPT o3 による概算(シェアは推測)
あくまで推測シェアを元にした概算値なのでその点を踏まえて見てもらいたい。2018年がピークだったようで359億ドル。コロナ禍で56億ドルまで下がったが、2024年は210億ドルだった。コロナが明けてもストライキの影響もあり持ち直していない。全盛期の3分の2に留まっている。そしてどうやら、コロナ禍前に戻ることはなさそうだ。
米国の映画産業はもはや斜陽なのだろうか?この数年の動向を見ているとそのようだ。ハリウッドはそのうち、カリフォルニア州からくりぬかれてラストベルトの一部に置かれるのかもしれない。
もちろん3分の2になってもまだまだ、世界の中で最大の規模であることに変わりはない。ただ以前のような、圧倒的存在ではなくなりつつある。
日本の映画市場ではそれが顕著だ。連休中に来日したトム・クルーズが人生を賭けたシリーズ「ミッション・インポシブル」のような大作とディズニーだけが存在感を発揮するも、完全に主役は邦画だ。しかもアニメが圧倒的に強い。
ほんの数年前まではハリウッド映画は大作がありつつも作家性の強い佳作もたくさん公開されていた。だがこの連休中、映画館はやり過ぎなくらい「名探偵コナン」にスクリーンを割いた。あとは「マインクラフト」「サンダーボルツ」。ディズニー映画でさえポリコレの度が過ぎた「白雪姫」はもう上映していない。往年のスター俳優ヒュー・グラントが怪演した「異端者の家」は上映館を探すのも大変だ。「教皇選挙」が意外なヒットと言ってもミニシアターでの話だ。
ハリウッド映画は明らかに弱くなった。往年の姿はもはやない。コンテンツ業界は世界に分散しはじめたのだ。
トランプとジョン・ボイトの大きな勘違い
トランプの映画関税のニュースを受けてさっそくNetflixやワーナーブラザーズなどの株価が下がったとBloombergが伝えている。
それは当然だろう。製造業に関税をかけるのと映画制作に関税をかけるのではまったく作用が違ってくる。
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